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熱処理工場の化学物質管理チェックリスト10項目【2026年版】

熱処理は、素材の性質を熱で変える工程です。めっきや塗装とちがって化学品が製品に残らないため、「うちは薬品を扱っていない」という感覚になりやすい工程でもあります。しかし工場にあるのは、焼入れ油・塩浴のソルト・雰囲気ガス・浸炭用のメタノール・前後の脱脂洗浄剤——化学品の集まりです。

しかも2026年4月施行の改正では、窒素(高圧のガスの状態のものに限る。)・水素・プロパン・メタン・二酸化炭素といった汎用の工業ガスが義務対象に加わりました。長年同じガスを同じ供給業者から買っている工場ほど、「昔から使っているものだから」で確認が後回しになりがちな部分です。

この記事は、熱処理工場(焼入れ・焼戻し・浸炭・窒化・塩浴処理)が工場全体で確認すべきことを10項目にまとめたチェックリストです。脱脂洗浄剤の該否確認は洗浄剤ガイドに詳細があります。

※お急ぎの方へ:SDS(PDF)が手元にあれば、成分の照合は無料診断で自動化できます(登録不要・その場で結果)。

チェックリスト(10項目)

台帳と該否確認

□ 1. 台帳が「油・塩・ガス・洗浄剤」まで届いているか

焼入れ油だけの台帳では足りません。焼戻し・オーステンパ用のソルト(塩浴剤)・浸炭用のメタノール・窒化用のアンモニア・炉の雰囲気ガスとパージガス・前後の脱脂洗浄剤・防錆油まで、工場に存在する化学品全部が対象です。

焼入れ油は消防法の危険物として別に管理している工場が多いはずですが、危険物の分類と安衛法のSDS義務は別制度です。危険物台帳があっても、安衛法側の台帳の代わりにはなりません。様式はSDS台帳のテンプレートを使ってください。

□ 2. 雰囲気ガスを含めて、全品番の最新版SDSが揃っているか

発行日が2024年より前のSDSは、その後の追加物質が反映されていない可能性が高いです。品番ごとに購入先へ最新版を請求してください(入手方法と請求文テンプレ)。

抜けやすいのがガスです。窒素は「高圧のガスの状態のものに限る」という限定つきの収載で、供給形態によって該否が変わり得ます。ボンベ・バルク(CE設備)のいずれで供給を受けている場合も、供給業者にSDSの交付と最新の該否の記載を確認するのが確実です。

□ 3. 成分×CAS番号で義務対象リストと照合済みか

照合はSDSの「3. 組成及び成分情報」のCAS番号ベースで(3項の読み方)。熱処理工程でよく見る対象成分:

お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。

物質名CAS番号SDS裾切値確認ポイント
鉱油複数0.1%焼入れ油・防錆油の基油。SDSでは「パラフィン系基油」等の通称で書かれることも
トリクロロエチレン79-01-60.1%塩素系の脱脂・蒸気洗浄。特化則(特別有機溶剤)との二重管理
テトラクロロエチレン127-18-40.1%同上。パークレンの通称で呼ばれる脱脂剤
ジクロロメタン75-09-20.1%同上。脱脂・塗膜剥離
石油ナフサ複数1%炭化水素系洗浄剤の基材
アンモニア7664-41-70.1%ガス窒化・軟窒化の雰囲気ガス
メタノール67-56-10.1%滴注式浸炭の原料液。有機則第2種との二重管理
一酸化炭素630-08-00.1%浸炭の変成ガス(RXガス)の主成分
水素2026年追加1333-74-01%光輝焼鈍・アンモニア分解ガス。ボンベ・バルクのSDSを確認
窒素(高圧のガスの状態のものに限る。)2026年追加7727-37-91%炉の雰囲気・パージ用。供給形態で該否が変わり得るため供給業者に確認
硝酸カリウム7757-79-10.1%焼戻し・オーステンパの硝酸塩浴
亜硝酸ナトリウム7632-00-00.1%硝酸塩浴の成分。防錆剤にも
シアン化ナトリウム143-33-90.1%液体浸炭の青化塩浴。廃止済みでも残置在庫・廃液に注意

2026年4月1日から、プロパン(CAS 74-98-6)・メタン(74-82-8)・二酸化炭素(124-38-9)といった汎用の工業ガスも義務対象に加わりました。変成ガスの原料や炉の燃料として供給を受けている場合、SDSの交付と発行日を確認してください。

塩浴軟窒化の浴剤の主成分はシアン酸ナトリウム(CAS 917-61-3、SDS裾切値1%)等のシアン酸塩で、これも義務対象です。青化塩(シアン化ナトリウム)とは別物質のため、浴剤ごとのSDSで成分名とCAS番号を確認してください。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。

この表にない成分はリスクアセスメント対象物質一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。

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自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。

□ 4. 照合結果に「確認日とリストの版」を記録しているか

対象物質リストは毎年のように更新され、2027年4月にはさらに追加されます。「いつのリストで確認したか」の記録がないと、更新のたびにゼロからやり直しになります。全物質は検索できる一覧で確認でき、厚労省のExcelを使う場合の手順は手作業での照合方法にまとめています。

リスクアセスメントと措置

□ 5. 該当品のリスクアセスメントを実施・記録しているか

油槽への投入と引き上げ、油切り、塩浴の建浴と塩の補給、処理後の水洗、雰囲気ガス配管の点検・パージ、焼入れ油の交換とろ過など作業単位でばく露を見積もります。熱処理で見落としの定番は、定常運転ではなく建浴・油交換・炉内清掃・トラブル対応といった非定常作業です。厚生労働省の簡易ツール(CREATE-SIMPLE)が使え、記録の様式はリスクアセスメント記録の書き方にテンプレがあります。

□ 6. 特化則・有機則との「二重管理」を整理できているか

塩素系の脱脂洗浄剤で使われるトリクロロエチレン・テトラクロロエチレン・ジクロロメタンは、有機則ではなく特化則側(特別有機溶剤等)で管理する物質です。滴注式浸炭のメタノールは有機則の第2種有機溶剤、アンモニアと一酸化炭素は特化則の第3類物質に位置づけられています。いずれも「特別規則で管理している=リスクアセスメント済み」ではありません。逆に、特別規則の対象ではない鉱油や工業ガスが義務対象リストに入っているケースも頻発します。

□ 7. 濃度基準値物質を確認したか

対象物質の一部には屋内作業のばく露濃度基準が設定されています。特化則・有機則の管理濃度とは別の値です。

□ 8. 油ミスト・塩・洗浄剤への直接ばく露対策があるか

焼入れ後のワーク取り出しと油切り、塩浴処理後の水洗、洗浄槽まわりの手作業は、油・塩・溶剤に触れる時間が長い作業です。ジクロロメタン・テトラクロロエチレン・メタノールは厚生労働省の皮膚等障害化学物質の一覧に登載されており、不浸透性の保護具の使用義務がかかります。洗浄剤をポリ容器に小分けして各槽の脇に置いている場合は、小分け容器の表示義務もあわせて確認してください。

体制

□ 9. 化学物質管理者・保護具着用管理責任者を選任したか

リスクアセスメント対象物を扱う事業場では規模を問わず化学物質管理者の選任義務があります。特定化学物質・有機溶剤の作業主任者とは別制度です(兼任可)。保護具でばく露低減を図る場合は、保護具着用管理責任者も必要です(選任は14日以内)。化学物質管理者の選任義務・要件の詳細はこちら。

□ 10. リスト更新に追従する担当と時期を決めているか

2027年4月に151物質、2028年4月に36物質の追加が公布済みです。2026年4月に工業ガスがまとまって加わったことが示すとおり、長く使っている化学品ほど「対象外のまま」とは限りません。「毎年4月に台帳とリストの差分を照合する」のように、担当と時期を決めて仕組みにしてください。

全部○にする近道

1〜4(台帳と該否確認)は、SDSさえ揃えば機械的に進む部分です。SDScanの無料診断は、SDSのPDFをアップするだけで成分×CAS×裾切値の照合(約2,300物質)を自動で行い、🔴🟡🟢で一覧します。焼入れ油のように、SDSの成分名が「パラフィン系基油」「ミネラルオイル」といった通称で書かれている場合も、収載名「鉱油」に該当する可能性がある成分として🟡(要確認)で拾います。台帳づくりの下敷きにどうぞ。

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自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。

よくある質問

Q. 雰囲気ガスにもSDSは必要ですか? A. 供給を受けているガスは交付の対象です。2026年4月から窒素(高圧のガスの状態のものに限る。)・水素・プロパン等が義務対象に加わりました。自社の変成炉で発生させるガスにSDSは付きませんが、リスクアセスメントの義務は残ります。

Q. 焼入れ油は消防法の危険物として管理しています。それで足りますか? A. 別制度です。義務対象リストには「鉱油」(SDS交付に係る裾切値0.1%)があり、基油が該当する可能性があります。SDSの成分名で確認してください。

Q. 塩浴を廃止しました。塩の管理はもう不要ですか? A. 残置在庫・廃液・炉の残渣がある間は取扱いが続きます。台帳から消す前に保管場所と数量を確認してください。

まとめ


参考(一次情報)

※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。最終判断は貴社の化学物質管理者または有資格の専門家にご確認ください。

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最終更新日:2026-09-04