CREATE-SIMPLEの使い方【中小企業向け】SDSのどこを見て何を入力するか
化学物質のリスクアセスメントは、対象物質を扱う事業場なら規模を問わず義務です。とはいえ「専門の測定業者に頼まないと無理では?」と止まってしまう会社が少なくありません。
結論から:厚生労働省の無料ツール「CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)」を使えば、SDSと作業の実態が分かる人なら自社で実施できます。 入力で迷いやすい箇所は数カ所に絞られます。この記事はそこを先回りして解説します。
CREATE-SIMPLEとは:厚労省の無料Excelツール
CREATE-SIMPLEは、厚生労働省が「職場のあんぜんサイト」で無償公開している**リスクアセスメント支援ツール(Excel形式)**です。
- 物質の有害性情報と取扱条件からばく露濃度を簡易に推定し、リスクレベルを判定する
- 吸入ばく露だけでなく、**経皮吸収や危険性(火災・爆発)**の確認にも対応
- 少量・低頻度の取扱いから使える設計で、中小事業場の簡易リスクアセスメントの定番
そもそもリスクアセスメントの方法は法令で一つに定められていません。実測(作業環境測定・個人ばく露測定)が必須なわけではなく、こうした簡易ツールによる見積りも認められた進め方です。なお、リスクアセスメント全体の流れ(特定→情報収集→見積り→措置→記録)は最小5ステップの記事で解説しています。この記事はそのうち「見積り」の実操作編です。
始める前に揃えるもの3つ
- 対象製品の特定——どの製品が義務対象物質を含むか。ここが未確認ならSDS3項の読み方から。製品のSDS(PDF)を無料診断にかければ該当成分の洗い出しを自動化できます
- 最新版のSDS——発行日が古いSDSは情報が不足しがちです(最新版の請求方法)
- 作業実態のメモ——誰が・何を・どれくらいの量と時間・どんな換気環境で使っているか。現場に5分聞くだけで入力が速くなります
SDSのどこを見るか(転記元の早見表)
| SDSの項 | 使う情報 | CREATE-SIMPLEでの用途 |
|---|---|---|
| 3項(組成・成分情報) | 成分名・CAS番号・含有量% | 物質の検索・含有率の入力 |
| 2項(危険有害性の要約) | GHS分類・区分 | 収載データがない物質の有害性入力 |
| 8項(ばく露防止・保護措置) | ばく露限界値・許容濃度、推奨保護具 | 管理目標濃度の確認・保護具の入力 |
| 9項(物理化学的性質) | 沸点・蒸気圧 | 揮発性の区分の手がかり |
使い方5ステップ
ステップ1:最新版を入手する
「職場のあんぜんサイト」内で配布されています(検索窓に「CREATE-SIMPLE」)。改訂が続いているツールなので、必ず最新版を使ってください。 Excelのマクロを有効にして動かすため、会社PCのセキュリティ設定でマクロが禁止されている場合は情報システム担当への確認が必要です。
ステップ2:物質を選ぶ
SDS3項のCAS番号で検索するのが確実です。ツールに収載されている物質なら、有害性データ(GHS区分・ばく露限界値)が自動で読み込まれます。収載がない場合は、SDSの2項・8項を見ながら手入力します。
混合物(塗料・シンナー・洗浄剤など)は製品を丸ごと1件で評価するのではなく、対象となる成分ごとに評価するのが基本です。どの成分が対象かは該否確認で先に絞ってください。
ステップ3:取扱条件を入力する
取扱量・含有率・作業時間と頻度・換気状況・保護具の有無などを選んでいきます。ここで結果を最も大きく左右するのが換気の区分です。
実態より良い条件を選ばないこと。 「全体換気あり」を選んだのに実際は窓を閉め切っている——という入力では、見積り自体が意味を失います。迷ったら悪い方(換気が弱い方)を選んでおくのが確実です。
ステップ4:判定結果を確認する
推定ばく露濃度と管理目標濃度(ばく露限界値等から設定)の比較で、リスクレベルが表示されます。レベルが高く出たら:
- 入力条件を再確認(含有率・取扱量・換気の選択ミスが定番)
- それでも高ければ低減措置を検討——換気の改善、作業時間の短縮、保護具の見直しなど。措置後の条件で再計算すると効果を確認できます
- 判断がつかない高リスクが残る場合は、実測(作業環境測定・個人ばく露測定)の検討へ
なお、濃度基準値が設定されている物質は、労働者のばく露をその値以下に抑えることが求められています。
ステップ5:レポートを保存し、周知する
結果は実施レポートとして保存し、**次のリスクアセスメントまでの間(少なくとも3年)**記録を残します。あわせて、関係する労働者への周知(掲示・回覧など)まで行って完了です。SDS管理台帳に実施日と次回予定の列を持たせておくと、更新管理がそのまま回ります。
最初のつまずき:「どの製品からやるか」が決まらない
CREATE-SIMPLEの操作より先に手が止まるのは、実は「うちの製品のうち、どれが対象なのか」の整理です。SDSをアップすれば義務対象の成分を🔴🟡🟢で一覧できるので、対象成分が入った製品から優先順位をつけられます。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます。
よくある質問
Q. CREATE-SIMPLEを使えば義務に対応できますか? A. 広く使われている見積り手法の一つですが、ツール単体では完結しません。記録・保存・周知と低減措置の検討までがワンセットです。特別規則(有機則・特化則等)の対象物質は、それらの遵守が前提です。
Q. SDSに数値が載っていないときは? A. CAS番号検索で収載データを確認し、足りなければ供給者へ問い合わせ(請求文テンプレ)。
Q. リスクレベルが高く出たら操業停止? A. いいえ、低減措置を検討する優先順位の目安です。入力の再確認→措置の検討→必要なら実測、の順で進めます。
まとめ
- CREATE-SIMPLEは厚労省の無料Excelツール。簡易ツールによる見積りで進めてよい
- 転記元はSDSの3項・2項・8項。始める前に対象製品の特定と最新版SDSを
- 換気条件は実態どおりに。結果は記録・保存・周知までがワンセット
- 対象製品の洗い出しは無料診断で自動化できます
参考(一次情報)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:表示・通知対象物質の一覧・検索
- 厚生労働省:CREATE-SIMPLE(リスクアセスメント支援ツール・「職場のあんぜんサイト」内で配布)
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。リスクアセスメントの実施内容の最終判断は、貴社の化学物質管理者または有資格の専門家にご確認ください。