化学物質の小分け容器に表示は義務?書くこと・表示例・いつからを整理【安衛則33条の2】
「一斗缶で買った洗浄剤を、使いやすいポリ容器に移して棚に置いている。あの容器にも表示が要るのか?」——現場でよく聞かれる質問ですが、答えはすでに出ています。
結論を先に:リスクアセスメント対象物を別の容器に移して保管するときは、「名称」と「人体に及ぼす作用」の明示が義務です(労働安全衛生規則第33条の2・2023年4月1日施行)。 ラベル貼付だけが方法ではありません。順に整理します。
何が対象か:移し替えて「保管」するとき
対象になるのは、リスクアセスメント対象物(ラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象物質。現在約2,300物質、検索できる一覧はこちら)を、購入時の容器から別の容器や包装(袋・小分けボトル等)に移し替えて保管する場面です。
| 場面 | 表示義務 |
|---|---|
| 一斗缶から小口のポリ容器に移して棚で保管 | 対象 |
| 購入時のラベル表示付き容器・包装のまま保管 | 対象外(元のラベルがそのまま機能) |
| 移し替えてその場で直ちに使用する場合(保管を伴わない) | 条文上の「保管」には当たらないと整理。ただし表示しておくのが望ましい |
ポイントは2つです。
- 義務の軸は「保管」。元のラベル付き容器のままなら追加の表示は不要
- 「保管」に当たるかどうか微妙な置き方(作業場所に数日置く等)は、この記事では断定しません。迷う場合は所轄の労働基準監督署や専門家に確認してください
なお「そもそもうちの製品が対象物質を含むのか」が分からない場合は、SDS第3項の読み方から確認するのが早道です。
何を書くか:「名称」と「人体に及ぼす作用」の2つ
書く内容は次の2項目です。GHSラベルの全項目を書き写す必要はありません。
- 名称 — 製品名または物質名。現場で使っている呼び名ではなく、SDS・ラベルと対応がつく名称にします
- 人体に及ぼす作用 — SDSの第11項(有害性情報)の主な内容を簡潔にまとめるのが基本形です
表示例(あくまで例です。実際の文言は手元のSDS第11項に基づいて作成し、発がん性・生殖毒性などの重大な有害性は省略しないでください):
| 移し替えた物 | 表示の例 |
|---|---|
| トルエン系シンナー | 「トルエン含有シンナー/吸入すると眠気・めまい。皮膚刺激。胎児への悪影響のおそれ。長期のばく露で神経系への影響のおそれ」 |
| アルカリ洗浄剤(水酸化ナトリウム含有) | 「アルカリ洗浄剤(水酸化ナトリウム)/重篤な皮膚の薬傷・目の損傷」 |
どう書くか:ラベル貼付に限らない
方法は柔軟です。条文は「保管に用いる容器又は包装への表示、文書の交付その他の方法」としており、次のような運用が認められます。
- 容器にラベルを貼る・直接記載する(最も確実)
- 保管棚や保管場所に掲示する(小さい容器・汚れる現場向き)
- 内容をまとめた一覧表・文書を保管場所に備え付け、容器側は番号等で対応させる
どの方法でも、その容器を取り扱う人に確実に伝わることが判断基準です。「事務所のファイルに綴じてあるが現場の誰も知らない」は明示になりません。
いつから:すでに義務。そして対象は増えていく
- 2023年4月1日:小分け保管時の明示義務が施行(安衛則33条の2)——すでに義務です
- 2024年4月〜2026年4月:ラベル・SDS義務の対象物質が段階的に拡大(674物質→約2,900物質規模)。2026年改正の全体像はこちら
- 2027年4月1日:IPA(イソプロピルアルコール)など「現場の定番」を含む物質の追加が公布済み。IPAの規制まとめ
つまり「うちは対象物質を使っていないから関係ない」が、製品を変えていないのに翌年から通用しなくなる構造です。小分け表示の義務も、対象物質の拡大と連動して適用範囲が広がります。
実務の進め方:3ステップ
- 対象物質かを確認する — 移し替えている製品のSDSで該否を確認。SDSの入手方法・台帳での管理とセットで
- 表示内容を準備する — 名称+SDS第11項ベースの「人体に及ぼす作用」。台帳に表示文言の欄を作っておくと更新が楽です
- 表示または代替方法で明示する — 容器ラベル・掲示・一覧表から現場に合う方法を選ぶ
この運用は化学物質管理者の職務(ラベル・SDSの管理)の一部です。担当者を決めて、リスクアセスメントや台帳整備と同じ枠組みで回すことをおすすめします。
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よくある質問
Q. いつから義務? A. 2023年4月1日施行済みです。これから準備する制度ではありません。
Q. ラベルを貼らないとダメ? A. 貼付に限りません。文書の交付・掲示等でも可。確実に伝わる方法が条件です。
Q. すべての小分け容器が対象? A. 「保管」に使う容器が対象です。元のラベル付き容器のままなら不要。移し替えて直ちに使う場合は対象外と整理されますが、表示が望ましい運用です。
Q. 2026年改正との関係は? A. 対象物質の拡大で、これまで無関係だった製品の小分けにも義務が及ぶケースが増えます。まず該否確認からです。
まとめ
- 対象物質を移し替えて保管する容器には「名称」+「人体に及ぼす作用」の明示が2023年4月から義務
- 方法はラベル貼付に限らない(文書・掲示等でも可。確実に伝わることが基準)
- 「人体に及ぼす作用」はSDS第11項の主な内容を簡潔に
- 2026年4月の対象拡大・2027年のIPA追加で、該当する製品はこれからも増える——出発点は該否確認
参考(一次情報)
- e-Gov法令検索:労働安全衛生規則(第33条の2)
- 厚生労働省:化学物質による労働災害防止のための新たな規制(労働安全衛生規則等の改正)解説資料
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。制度の詳細・最新の運用は一次情報をご確認のうえ、最終判断は有資格の専門家にご確認ください。