洗浄剤はSDS規制の対象?2026年改正で確認すべき3ステップ【製造業向け】
「うちで使っているのは普通の洗浄剤だから、化学物質の規制は関係ない」——金属加工や機械メンテナンスの現場で、よく聞く言葉です。しかし2026年4月の労働安全衛生法の改正施行により、この前提は通用しなくなりつつあります。
この記事では、自社で使っている洗浄剤が規制対象かどうかを、自分で確認するための3ステップを解説します。対象は、洗浄剤を「使う側」(受け取る側)の中小製造業の方です。
※お急ぎの方へ:SDS(PDF)が手元にあれば、成分の照合は無料診断で自動化できます(登録不要・その場で結果)。
結論:商品名では判定できない。決まるのは「成分×含有量」
最初に最も重要なポイントをお伝えします。「洗浄剤」という製品カテゴリでは、規制対象かどうかは判定できません。
労働安全衛生法のラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務は、製品名ではなく含有する個々の化学物質に対してかかります。同じ「アルコール系洗浄剤」という名前でも、
- 製品Aは義務対象物質を裾切値(後述)以上含む → 規制対象
- 製品Bは対象物質を含まない、または裾切値未満 → 対象外
ということが普通に起こります。判定に必要な情報はすべてSDS(安全データシート)の中、特に「3. 組成及び成分情報」にあります。
2026年改正で何が変わるのか
対象物質は段階的に拡大されてきました。改正前の674物質から、2024年4月・2025年4月の追加を経て、2026年4月には約2,900物質規模に達します(資料によっては約2,300種と表記されますが、これは物質群のまとめ方の違いによるものです)。
さらに2025年5月に公布された改正労働安全衛生法では、将来的にリスト方式そのものを転換し、国のGHS分類で危険性・有害性が確認されたすべての化学物質に通知義務を広げる方向が決まっています。
つまり「昔調べて対象外だった」は、もう安全ではありません。数字すら資料によってブレるほど変化が速いのが現在の状況です。一次情報は厚生労働省の「ラベル・SDS義務対象物質一覧」と労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)の公開リストで確認できます。
自社の洗浄剤を判定する3ステップ
ステップ1:SDSを入手し「3. 組成及び成分情報」を開く
まず、使用中の洗浄剤すべてについて最新版のSDSを入手します。購入先(販売店・商社)には交付義務があるため、手元になければ請求してください。古いSDSしかない場合は要注意です。2024年以降の対象物質追加が反映されていない可能性があります。
SDSのセクション3には、含有する化学物質の**名称・CAS登録番号・含有量(濃度)**が記載されています。判定に使うのはこの3点です。
ステップ2:成分を義務対象物質リストと照合する
セクション3の各成分を、厚生労働省のラベル・SDS義務対象物質リストと突き合わせます。照合はCAS登録番号で行うのが確実です。物質名は別名・慣用名が多く、名前だけの照合は見落としの原因になります。
洗浄剤でよく見る義務対象成分のチェックリスト:
お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。
| 物質名 | CAS番号 | SDS裾切値 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| アセトン | 67-64-1 | 0.1% | 脱脂・樹脂洗浄 |
| MIBK | 108-10-1 | 0.1% | 溶剤系洗浄剤 |
| ヘキサン | 複数 | 0.1% | 油脂洗浄・パーツクリーナー |
| 水酸化ナトリウム | 1310-73-2 | 1% | アルカリ洗浄の主成分 |
| 石油ナフサ | 複数 | 1% | 炭化水素系洗浄剤の基材 |
イソプロピルアルコール(IPA、CAS 67-63-0)は現行リストでは対象外ですが、2027年4月1日から義務対象に追加されます(安衛則別表第2)。含有製品の把握は今のうちに。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。
この表にない成分は全物質の一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます。
ステップ3:含有量を「裾切値」と比較する
対象物質を含んでいても、即・規制対象とは限りません。物質ごとに**裾切値(これ以上含有していたら義務がかかる濃度の下限)**が定められており、SDS交付とラベル表示で裾切値が異なる物質もあります。
セクション3の含有量と、リストに記載された裾切値を比較して初めて該否が確定します。ここが手作業で最も間違いやすい工程です。
なお、この照合(成分名×CAS番号×裾切値、約2,300物質)を自動でやるのがSDScanの無料診断です。SDSのPDFをアップするだけで、対象の可能性を🔴🟡🟢で一覧できます。
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金属加工・メンテナンス現場の実務ポイント
洗浄剤が規制対象と判明した場合、使う側の事業者にも義務が生じます。
- リスクアセスメントの実施:対象物質を扱う作業についてリスクの見積もりと低減措置が必要です
- 化学物質管理者の選任:リスクアセスメント対象物を扱う事業場では、規模を問わず選任が必要です
- SDSの保管と更新追従:法改正や成分変更でSDSは改訂されます。常に最新版を把握する体制が求められます
「洗浄剤は補助材料だから」という理由で管理対象から漏れやすいのが、まさにこのカテゴリです。塗料やシンナー(別記事で解説: 塗料編・シンナー編・切削油編)と合わせて、事業場全体の棚卸しをおすすめします。
よくある質問
Q. 家庭用と同じ洗浄剤を業務で使っています。対象になりますか? A. なり得ます。義務は「業務での取り扱い」に対してかかるため、家庭用製品でも事業場で使用し、対象物質を裾切値以上含めばリスクアセスメント等の対象です。
Q. SDSが手に入りません。どうすればいいですか? A. 義務対象物質を含む製品なら、譲渡・提供者にSDS交付義務があります。まず購入先に請求してください。応じてもらえない場合、その製品の継続使用自体を見直す判断材料になります。
Q. 一度確認すれば終わりですか? A. いいえ。対象物質リストは2024年・2025年・2026年と追加が続いており、さらに全GHS分類物質への拡大も決定済みです。「確認した時点では対象外」が翌年度に対象化するケースが現実に発生しています。
まとめ:照合作業そのものを自動化する
判定の理屈はシンプルですが、実務では「SDSを集める→成分とCAS番号を拾う→最新リストと照合する→裾切値と比較する→法改正のたびにやり直す」という反復作業になります。洗浄剤が10種類、化学品全体で50種類を超えると、手作業での維持は現実的ではありません。
SDScanは、手元のSDS(PDF)をアップロードするだけで、成分の抽出と義務対象物質リストとの照合を自動で行うツールです。無料プランで今お使いの洗浄剤のSDSを試せます。まず1枚、判定してみてください。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「ラベル・SDS義務対象物質一覧・検索」
- 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)化学物質情報管理研究センター
- NITE-CHRIP(化学物質総合情報提供システム)
本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。最新の法令は必ず一次情報をご確認ください。