イソシアネート(TDI・MDI・HDI)の規制まとめ — 2液ウレタンの硬化剤は要チェック
2液ウレタン塗料、ウレタン系接着剤、シーリング材、発泡ウレタン——これらの「硬化剤」側に入っているのがイソシアネート類です。
この物質群が厄介なのは、主剤のSDSだけ確認して「該当なし」で安心してしまう事故が起きやすいこと。イソシアネートは硬化剤側にいます。そして、代表的なTDI・MDI・HDIはいずれも労働安全衛生法のラベル・SDS・リスクアセスメント義務の対象です。
代表3物質と裾切値
| 物質 | 略称 | 主な用途 | SDS交付の裾切値 |
|---|---|---|---|
| トリレンジイソシアネート | TDI | 軟質ウレタンフォーム、塗料硬化剤 | 0.1% |
| 1,1’-メチレンビス(イソシアナトベンゼン) | MDI | 接着剤、硬質フォーム、シーリング | 0.1% |
| ヘキサメチレン=ジイソシアネート | HDI | 2液ウレタン塗料の硬化剤(耐候性) | 0.1% |
出典: 厚生労働省 労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧。裾切値はSDS交付等に係る値。
ポイントは裾切値が0.1%と低いこと。「硬化剤の主成分」としてだけでなく、少量の添加でも対象になりやすい水準です。なお義務対象のイソシアネート類はこの3つだけではなく、IPDI(イソホロンジイソシアネート系)やフェニルイソシアネートなども収載されています。手元の成分名は全物質の検索一覧で引けます。
なぜ規制が厳しいのか:感作性(ぜんそく)
イソシアネート類は、呼吸器感作性——繰り返しばく露するうちにアレルギー性のぜんそくを起こす性質——で知られる物質群です。一度感作が成立すると、ごく低濃度のばく露でも発作が出るようになり、その作業を続けられなくなることがあります。
「今日吸っても何ともなかった」が通用しないタイプのリスクなので、濃度が薄くても、ばく露を積み重ねない管理(換気・保護具・作業方法)が重視されます。スプレー塗装のようにミストが発生する工程は特に注意が必要です。
見落としの定番2つ
1. 硬化剤側のSDSを入手していない
2液型製品は主剤と硬化剤で別々のSDSが発行されます。購入時に主剤のSDSしか受け取っていないケースは珍しくありません。台帳には主剤・硬化剤を別の行として登録し、硬化剤のSDSがなければ購入先に請求してください。
2. 「ポリイソシアネート」「プレポリマー」表記の罠
硬化剤のSDSに「TDI」と書かれておらず、「ポリイソシアネート」「ウレタンプレポリマー」とだけ書かれていることがあります。これで対象外と判断するのは早い——未反応の残存モノマーが0.1%以上含まれていれば、その成分は義務対象です。SDSの項目3に「残存TDI <0.5%」のような記載がないか確認してください(3項の読み方)。
実務の手順:この順で確認する
- 2液型・ウレタン系の製品を台帳から洗い出す(塗料・接着剤・シーリング・発泡剤)
- 硬化剤側のSDSが揃っているか確認、なければ請求
- 項目3で成分・CAS番号・含有率を確認(プレポリマー製品は残存モノマーの行に注目)
- 義務対象リストと照合し、該当があればリスクアセスメントへ(吸入だけでなく皮膚接触も)
照合の手間は、SDSをアップすれば自動化できます。硬化剤のSDSと主剤のSDSをまとめて診断すれば、どちらに義務対象が入っているかが一度で分かります。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます。
接着剤に入っていがちな他の対象成分
イソシアネート以外にも、接着剤・粘着剤には義務対象の定番成分があります。
お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。
| 物質名 | CAS番号 | SDS裾切値 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| トルエン | 108-88-3 | 0.1% | 溶剤系(ゴム系等) |
| 酢酸エチル | 141-78-6 | 1% | 溶剤系 |
| MEK | 78-93-3 | 1% | 溶剤系 |
| MDI | 複数 | 0.1% | ウレタン系。主剤・硬化剤両方のSDSを |
| TDI | 複数 | 0.1% | ウレタン系 |
| シアノアクリレート | 7085-85-0 | 1% | 瞬間接着剤 |
| 酢酸ビニル | 108-05-4 | 0.1% | 水性エマルション系。「水性=対象外」ではない |
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。
この表にない成分は全物質の一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます。
塗料側の一覧は塗料のSDS確認ガイド、接着剤全般の手順は接着剤のSDS確認ガイドにまとめています。なお溶剤系のウレタン塗料・接着剤は消防法の危険物(引火性液体)に該当することも多いので、消防法との違いの整理もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. 主剤のSDSで該当なしなら終わり? A. 終わりではありません。イソシアネートは硬化剤側です。硬化剤のSDSを入手して両方照合してください。
Q. 「プレポリマー」表記なら対象外? A. 表記だけでは判断できません。残存モノマーが0.1%以上なら対象です。項目3を確認。
Q. 硬化後は安全? A. リスクの中心は施工中・乾燥中のばく露と、加熱・研磨工程です。「硬化後は安全」と一般化せず、作業単位で評価してください。
まとめ
- TDI・MDI・HDIはラベル・SDS・リスクアセスメント義務の対象、裾切値は0.1%と低い
- 見落としの定番は「硬化剤側のSDS未入手」と「プレポリマー表記の残存モノマー」
- 呼吸器感作性(ぜんそく)のリスクが本質。薄くても積み重ねない管理を
- 主剤・硬化剤のSDSをまとめて無料診断にかければ、照合は一度で終わります
参考(一次情報)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:表示・通知対象物質の一覧・検索(各物質のGHS分類情報・モデルSDSも掲載)
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。特別規則(特化則等)・化管法など個別法令の該当は製品SDSの項目15および最新の公的資料で確認し、最終判断は貴社の化学物質管理者・有資格の専門家にご確認ください。