塗料は2026年のSDS規制対象?塗装業者が成分表で確認すべきこと
塗装業や塗装工程を持つ町工場にとって、塗料は毎日使う当たり前の材料です。その当たり前の材料が、2026年4月の労働安全衛生法の改正施行で法的な管理義務の対象になっている——もしくは今年度から新たになった——可能性があります。
この記事では、塗料を「使う側」の事業者が、自社の塗料が規制対象かどうかを確認する手順を解説します。
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「水性だから大丈夫」は思い込みかもしれない
塗料の規制というと、トルエンやキシレンを含む溶剤系(油性)塗料を思い浮かべる方が多いはずです。実際、それらは従来から有機溶剤中毒予防規則などの対象でした。
しかし現在の化学物質規制は発想が違います。製品の種類ではなく、含まれる個々の物質で義務が決まります。つまり、
- 溶剤系でも、対象成分が裾切値未満なら義務の範囲は変わる
- 水性塗料でも、顔料・樹脂・添加剤に義務対象物質を含めば規制対象になり得る
「水性に切り替えたから規制は卒業」とは言えないのです。判定材料はSDS(安全データシート)の「3. 組成及び成分情報」にすべて書かれています。
2026年改正のインパクト:対象は約2,900物質規模へ
ラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象物質は、674物質(改正前)から段階的に拡大し、2026年4月には約2,900物質規模になります。塗料に使われる顔料・樹脂モノマー・添加剤からも多数追加されており、「昨年度は対象外だった成分が今年度から対象」が普通に起きています。
さらに2025年5月公布の改正法では、GHS分類で危険性・有害性が確認された全物質への拡大が決定済み。リストを年1回見るだけの運用では、もう追いつかない段階に入っています。
自社の塗料を判定する3ステップ
ステップ1:全塗料のSDSを揃える
色番・品番ごとにSDSは別です。同じシリーズでも色によって顔料が異なり、該否が分かれることがあります。「主力の白だけ確認した」では棚卸しになりません。販売店・メーカーに最新版を請求してください。
ステップ2:成分をCAS番号で対象リストと照合する
SDSのセクション3にある成分名・CAS登録番号を、厚生労働省の義務対象物質リストと突き合わせます。塗料でよく見る義務対象成分のチェックリスト:
お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。
| 物質名 | CAS番号 | SDS裾切値 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| トルエン | 108-88-3 | 0.1% | 溶剤系塗料全般 |
| キシレン | 複数 | 0.1% | 溶剤系塗料全般 |
| エチルベンゼン | 100-41-4 | 0.1% | キシレン含有塗料とセット |
| 酢酸ブチル | 複数 | 1% | ラッカー系 |
| MEK | 78-93-3 | 1% | 溶剤・洗浄兼用 |
| TDI | 複数 | 0.1% | 2液ウレタンの硬化剤側SDSを確認 |
| HDI | 822-06-0 | 0.1% | 同上 |
| 鉛及びその無機化合物 | 複数 | 0.1% | 防錆顔料。旧在庫は特に注意 |
| クロム酸塩(黄鉛等) | 複数 | 0.1% | 顔料。六価クロム系 |
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。
この表にない成分は全物質の一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。
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2液型塗料は主剤と硬化剤で別のSDSです。硬化剤側の確認漏れが頻発ポイントです(硬化剤に入るイソシアネートの規制は個別解説にまとめています)。
ステップ3:含有量と裾切値を比較する
対象物質が見つかっても、含有量が裾切値(義務がかかる濃度の下限)未満なら該当しない場合があります。物質ごとに値が異なり、SDS交付とラベル表示で裾切値が違う物質もあるため、リストの数値と照合してください。判定ミスが最も起きやすい工程です。
なお、この照合(成分名×CAS番号×裾切値、約2,300物質)を自動でやるのがSDScanの無料診断です。SDSのPDFをアップするだけで、対象の可能性を🔴🟡🟢で一覧できます。
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塗装現場の実務ポイント
対象塗料があると判明したら、使う側にも次の対応が必要です。
- リスクアセスメント:吹付け・刷毛塗り・乾燥など作業ごとにばく露を見積もり、低減措置(換気・保護具等)を講じる
- 化学物質管理者の選任:対象物を扱う事業場では規模を問わず必要
- 保護具着用管理者:保護具でばく露低減を図る場合に選任
- シンナー・洗浄剤も同時に棚卸し:塗装現場では塗料本体よりシンナーや洗浄剤の方が対象成分濃度が高いことも珍しくありません
よくある質問
Q. 有機則(有機溶剤中毒予防規則)はずっと守ってきました。それで足りませんか? A. 有機則の対応と、新しい義務(対象物質のリスクアセスメント等)は別立てです。有機則対象外の成分が新リストで対象になっているケースがあり、両方の確認が必要です。
Q. 少量しか使いません。それでも対象ですか? A. 使用量による免除は基本的にありません。義務の該否は成分と含有量(裾切値)で決まります。リスクアセスメントの中身は取扱量に応じて簡素にできますが、「少量だから何もしない」は通りません。
Q. メーカーのカタログに「法規制対応」と書いてあれば安心ですか? A. その表記は多くの場合「メーカー側の交付義務への対応」を指します。使う側のリスクアセスメント義務は自社に残ります。該否の確認はSDSベースで自社判断が必要です。
まとめ:色番ごとの照合を手作業でやり続けられるか
塗料は色番・品番単位でSDSが分かれるため、照合対象の枚数が膨らみやすい材料です。20色×主剤硬化剤で40枚、シンナー類を足せば50枚超——これを法改正のたびに人力で照合し直すのは、現実的ではありません。
SDScanは、SDSのPDFをまとめてアップロードするだけで、成分抽出と義務対象リストとの照合を自動化します。無料プランで手元の塗料SDSから試せます。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「ラベル・SDS義務対象物質一覧・検索」
- 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)化学物質情報管理研究センター
- NITE-CHRIP(化学物質総合情報提供システム)
本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。最新の法令は必ず一次情報をご確認ください。