接着剤は化学物質規制に該当する?2026年改正での確認手順【印刷・組立・木工向け】
印刷・製本、部品組立、木工、内装——接着剤は幅広い現場で使われていますが、「接着剤=化学物質規制」と意識している事業者は多くありません。塗料や溶剤に比べてノーマークになりやすい材料です。
しかし労働安全衛生法の義務は製品ジャンルではなく含有成分にかかります。2026年4月の改正施行で対象物質が約2,900物質規模へ拡大した今、お使いの接着剤が該当している可能性は十分あります。この記事で、自社での確認手順を整理します。
※お急ぎの方へ:SDS(PDF)が手元にあれば、成分の照合は無料診断で自動化できます(登録不要・その場で結果)。
接着剤のSDS(書類そのもの)をお探しの方へ:接着剤は製品ごとに成分が違う混合物で、2液型は主剤と硬化剤で別のSDSです。購入先(販売店・商社・メーカー)に品番と版を指定して請求するのが最短です(請求文テンプレ付きの入手方法)。主要メーカーは自社サイトでSDSを公開しています。成分ごとの参考資料は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のモデルSDS(2-シアノアクリル酸エチル・MDI・トルエンなど単一物質)にあります。以下は、届いたSDSを受け取った側の「該当するか」の整理です。
接着剤の該否は「種類」ではなく「成分と濃度」で決まる
接着剤は化学的に多様で、同じ「ボンド」と呼ばれていても中身は別物です。だからこそ、製品名や種類のレベルでは該否を判定できません。判定材料はSDS(安全データシート)の「3. 組成及び成分情報」です。
接着剤でよく見る義務対象成分のチェックリスト:
お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。
| 物質名 | CAS番号 | SDS裾切値 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| トルエン | 108-88-3 | 0.1% | 溶剤系(ゴム系等) |
| 酢酸エチル | 141-78-6 | 1% | 溶剤系 |
| MEK | 78-93-3 | 1% | 溶剤系 |
| MDI | 複数 | 0.1% | ウレタン系。主剤・硬化剤両方のSDSを |
| TDI | 複数 | 0.1% | ウレタン系 |
| シアノアクリレート | 7085-85-0 | 1% | 瞬間接着剤 |
| 酢酸ビニル | 108-05-4 | 0.1% | 水性エマルション系。「水性=対象外」ではない |
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。
この表にない成分はリスクアセスメント対象物質一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます(無料は月3件まで)。
自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
ポイントは2つ。2液型は主剤と硬化剤でSDSが別であること、そして水性でも添加剤で該当し得ることです。エポキシ系のビスフェノールA型樹脂・アミン系硬化剤や、ホットメルトの樹脂・ワックス類も、製品によって対象成分を含むため個々のSDSで確認してください。
瞬間接着剤(シアノアクリレート系)は対象?——2025年4月から一覧に収載されています
「瞬間接着剤は少量だから」「家庭用と同じものだから」と、確認の外に置かれがちな製品です。しかし主成分のシアノアクリレートは、2025年4月1日施行分で義務対象物質の一覧に収載されています(下表の2物質とも)。
| SDSでの表記例 | CAS番号 | 一覧での収載名 | SDS交付等の裾切値 |
|---|---|---|---|
| エチル-2-シアノアクリレート | 7085-85-0 | 2-シアノアクリル酸エチル | 1% |
| メチル-2-シアノアクリレート | 137-05-3 | 2-シアノアクリル酸メチル | 0.1% |
一般的な瞬間接着剤はエチル体が80〜95%程度を占め、裾切値の1%を大きく超えます。事業場で使う業務用の瞬間接着剤は、チューブ1本でもラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの対象になっている可能性が高い製品です。ホームセンターで買えても、業務用として売られていれば同じです(家庭用として売られている製品の扱いは、下のよくある質問を参照)。
- 名前で探すと見つかりません。 SDSには「エチル-2-シアノアクリレート」「シアノアクリル酸エステル」などと書かれますが、一覧の収載名は「2-シアノアクリル酸エチル」です。CAS番号 7085-85-0 で照合してください(義務対象物質の一覧はCAS番号で検索できます)。
- 手袋・マスク(保護具)。 メチル体は皮膚刺激性有害物質に指定されており(含有率1%以上)、不浸透性の保護手袋などの使用が義務です。濃度基準値(8時間 0.2 ppm)も定められています。エチル体はこの記事の作成時点で皮膚等障害化学物質の指定はなく、保護具は努力義務の扱いですが、皮膚に付くと瞬時に接着し、硬化時の蒸気は目や鼻を刺激します。換気と、SDSの8項(ばく露防止及び保護措置)に書かれた保護具に従ってください(保護具の義務と努力義務の線引き)。
- SDSは最新版を。 2025年4月の追加より前に発行されたSDSは、15項(適用法令)に安衛法の記載がないことがあります。発行日を確認し、古ければ購入先に最新版を請求してください(SDSの入手方法)。
2026年改正の背景:リスト方式から「全物質」への転換
義務対象物質は674物質から段階拡大し、2026年4月に約2,900物質規模となりました。さらに2025年5月公布の改正法で、将来的にはGHS分類で危険性・有害性が確認されたすべての化学物質へ通知義務が広がることが決定しています。
接着剤のように成分が多様な製品ほど、この拡大の影響を受けます。「数年前に確認して対象外だった」製品が、成分はそのままでもリスト側の更新で対象化する——これが現在の規制環境です。
自社の接着剤を判定する3ステップ
ステップ1:使用中の接着剤を棚卸ししてSDSを揃える
現場ごと・工程ごとに散在しがちなので、まず「何を使っているか」のリスト化から始めます。2液型は主剤・硬化剤それぞれのSDSを、購入先に最新版で請求してください。
ステップ2:成分をCAS番号で義務対象リストと照合する
セクション3の成分名とCAS登録番号を、厚生労働省のラベル・SDS義務対象物質リストと突き合わせます。接着剤は慣用名・商品名ベースの成分表記が紛れやすいため、CAS番号での照合が確実です。
ステップ3:含有量を裾切値と比較する
対象成分があっても、含有量が裾切値(義務がかかる濃度の下限)未満であれば該当しない場合があります。物質ごとに値が異なるため、リストの数値との突き合わせが必要です。瞬間接着剤のように単一成分がほぼ100%の製品は、対象成分なら即該当と考えるべきです。
なお、この照合(成分名×CAS番号×裾切値、約2,300物質)を自動でやるのがSDScanの無料診断です。SDSのPDFをアップするだけで、対象の可能性を🔴🟡🟢で一覧できます。
この記事の例で、照合を試す
溶剤系接着剤とウレタン系硬化剤の例を入れてあります。「照合する」を押すと、この場で対象物質一覧と裾切値に照合して🔴🟡🟢を返します。自社のSDSの「3. 組成及び成分情報」に貼り替えれば、そのまま自社製品の確認になります。送信・保存はありません。
1行に1成分(成分名・CAS番号・含有率のどれでも)。入力内容はサーバーに送信されず、このページの中だけで照合します。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます(無料は月3件まで)。
自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
印刷・組立現場の実務ポイント
- リスクアセスメント:貼り合わせ・ラミネート・充填など作業単位でばく露を見積もる。乾燥工程の溶剤蒸気は見落としがちです
- 化学物質管理者の選任:対象物を扱う事業場では規模を問わず必要
- 皮膚接触対策:接着剤は手作業での皮膚接触が多い材料です。皮膚等障害化学物質に該当する場合、保護手袋等の使用が義務になります
- 周辺資材も同時確認:接着剤の希釈・拭き取りに使う洗浄剤や、同じ現場の塗料も同じ枠組みで確認できます
よくある質問
Q. ホームセンターで買える接着剤を業務で使っています。対象になりますか? A. 製品の想定用途で分かれます。「業務用」として販売されている製品は、ホームセンターやネット通販で買えてもラベル表示・SDS交付の義務対象で、リスクアセスメントの対象です。一方「家庭用」として販売されている製品(主として一般消費者の生活の用に供する製品)は、供給者のラベル・SDS交付義務と、事業者のリスクアセスメント実施義務の対象から除かれています(安衛則第34条の2の7・厚労省Q&A Q4-1)。ただし厚労省は、業務で使うなら自主的なリスクアセスメントを勧めています。迷ったら購入先に業務用のSDSがあるかを確認してください。
Q. 使用量はチューブ数本程度です。それでも確認が必要ですか? A. 該否の判定に使用量の免除はありません。少量であれば講じる措置は簡素で済むことが多いものの、「対象かどうかの確認」自体は省略できません。
Q. SDSに「該当法令:労働安全衛生法」と書いてあれば、それで確定ですか? A. SDSのセクション15(適用法令)は有力な手がかりですが、SDSの作成時点が古いと最新の追加が反映されていないことがあります。発行日を確認し、古い場合は最新版を請求してください。
Q. 瞬間接着剤にマスクは必要ですか? A. 法令上「瞬間接着剤だからマスク」という一律の義務はありません。リスクアセスメントで硬化時の蒸気のばく露を見積もり、換気で足りなければSDSの8項にある保護具を選びます。メチル体(2-シアノアクリル酸メチル)を含む製品は濃度基準値(8時間 0.2 ppm)があるため、ばく露がそれ以下になる措置が必要です。皮膚への付着対策は上の節を参照してください。
Q. 接着剤は消防法の「危険物」にも該当しますか? A. 有機溶剤系の接着剤は引火性液体として該当することがあります。消防法の危険物と労働安全衛生法のSDS義務対象は別の制度・別の判定基準なので、両方の確認が必要です。詳しくは消防法の「危険物」とSDS義務対象の違いをご覧ください。
まとめ:散在する接着剤こそ、照合の自動化が効く
接着剤は「現場のあちこちにある・種類が雑多・SDSの発行時期もバラバラ」という、手作業照合と最も相性が悪い材料です。1枚ずつ成分を拾ってリストと突き合わせ、法改正のたびにやり直す——その作業自体を自動化するのが現実解です。
SDScanは、SDSのPDFをアップロードするだけで成分抽出と義務対象リストとの照合を行います。無料プランで、まず手元の接着剤のSDSから試してみてください。
整理したいSDSは何件ありますか?
1件はSDSのPDF 1ファイルです。PDF内のページ数とは別に数えます。
4件以上を自分で管理する
有料は1回10ファイルまで一括診断。月間上限はライト300ページ、スタンダード1,000ページです。台帳に保存し、改正のたびに自動で再照合します。
ライトは年間 ¥30,000/月額 ¥3,000。PDF内のページ数で利用量を数えます。
年間プランを見る →まとめて台帳を作ってもらう
SDSをまとめて送るだけ。該否・裾切値・根拠つきの台帳を3営業日で納品。SDS 50件まで ¥19,800〜、請求書は納品後。
50件・150件・300件のプラン。301件以上も個別見積で承ります。
台帳を作ってもらう →PDFが手元にないときは、SDSの3項の成分名・CAS番号を貼るだけの照合(送信なし)でも同じ判定が出ます。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「ラベル・SDS義務対象物質一覧・検索」
- 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)化学物質情報管理研究センター
- NITE-CHRIP(化学物質総合情報提供システム)
本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。最新の法令は必ず一次情報をご確認ください。