はんだ・フラックスのSDS|鉛フリーでも義務対象?合金の見方・裾切値・ラベルとの違い【電子機器組立・板金向け】
基板実装、電子機器の組立、板金のはんだ付け——はんだとフラックスは「材料」より工具箱の中身に近く、化学物質の棚卸しから抜けやすい資材です。
結論から。はんだは鉛入りでも鉛フリーでも、SDS交付・リスクアセスメントの義務対象になり得ます。 決めるのは製品名ではなく成分と含有率で、すず・銅・銀はいずれも裾切値0.1%で収載されています。「鉛を抜いたから対象外」は成り立ちません。
はんだ線にGHSラベルが無いことも珍しくありませんが、これも対象外の根拠になりません。ラベル表示とSDS交付は条文が別です。
はんだ・フラックスのSDS(書類そのもの)をお探しの方へ:はんだは合金なので、成分の含有率は品番(合金組成)ごとに違います。フラックス・やに入りはんだも別のSDSです。購入先(販売店・商社・メーカー)に品番を指定して請求するのが最短です(請求文テンプレ付きの入手方法)。単一成分の参考資料は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のロジンのモデルSDSなどが公開されています(製品ごとのSDSの代わりにはなりません)。以下は、届いたSDSを受け取った側の「義務の対象か」の整理です。
型別の早見表
| 製品の型 | SDS交付 | ラベル表示 | リスクアセスメント |
|---|---|---|---|
| 鉛入りはんだ(線・棒=固体) | 収載成分を裾切値以上含めば対象 | すず・鉛など列挙された金属は「粉状のものに限る」ため、その金属を理由としては対象外になり得る | SDS交付の対象なら対象 |
| 鉛フリーはんだ(線・棒。やに入りを含む) | すず・銅・銀・ビスマス等で該当し得る | すず・銅・銀・インジウムは同上。アンチモンには粉状の限定が付かないためSn-Sb系は固体でも対象になり得る。ビスマスとやに(ロジン)は第二号の物なので、固体で粉状にならない製品では規則第30条ただし書で除外され得る | 同上 |
| ソルダーペースト(クリームはんだ) | 同上 | 合金が粉末のため「粉状のもの」に当たり、対象になり得る | 同上 |
| 液状フラックス・ペーストフラックス | ロジン・溶剤・塩化亜鉛等で該当し得る | 通常どおり判定 | 同上 |
「対象になり得る」は成分と含有率しだいです。
ラベルとSDSは条文が違う——「粉状のものに限る」
労働安全衛生法施行令 第18条第一号(ラベル表示の対象)にこうあります。
別表第九に掲げる物(アルミニウム、イットリウム、インジウム、カドミウム、銀、クロム、コバルト、すず、タリウム、タングステン、タンタル、銅、鉛、ニッケル、ハフニウム、マンガン又はロジウムにあつては、粉状のものに限る。)
括弧の中に銀・すず・銅・鉛が並んでいます。これらの金属は、粉状でなければラベル表示の対象になりません(その金属を理由としては、という意味です。製品は他の成分で対象になり得ます)。
同じ別表第九には金属群として「アンチモン及びその化合物」も載っていますが、こちらは括弧の列挙に入っておらず、粉状の限定が付いていません。Sn-Sb系のはんだ線は、固体でもラベル表示の対象になり得ます。
一方、SDS交付(通知)を定める第18条の2第一号は「別表第九に掲げる物」だけで、粉状の限定がありません。固体のはんだ線・棒でも、収載金属を裾切値以上含めばSDS交付の対象になり得ます。
合金そのものは第18条第三号/第18条の2第三号の「前二号に掲げる物を含有する製剤その他の物(前二号に掲げる物の含有量が厚生労働大臣の定める基準未満であるものを除く。)」に当たり、判定は成分ごとに含有率と裾切値を比べる形になります。
第18条には第二号もあり、こちらは労働安全衛生規則の別表第2に載る物です(ロジン・プロピルアルコール・エタノール・塩化亜鉛・ビスマスなど、大多数の物質はここに入ります)。この第二号の物については、規則第30条のただし書が「運搬中及び貯蔵中において固体以外の状態にならず、かつ、粉状にならない物」をラベル表示から除いています(危険物・可燃性の物・皮膚腐食性のものは除外の例外)。やに入りはんだ線のように固体で粉状にならない製品なら、やに(ロジン)についてもラベル表示から除かれ得るということです。逆に、製品が可燃性の物等に当たればこの除外は受けません(ロジンは可燃性の固体です)。一方、SDS交付側の第34条の2に同種の除外はありません。
法第57条の3の対象は「第57条第1項の政令で定める物及び通知対象物」。つまりSDS交付の対象ならリスクアセスメントの対象で、ラベルが無いことを理由に飛ばせる工程ではありません。
はんだ・フラックスで見るべき収載名と裾切値
お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。
| 物質名 | CAS番号 | SDS裾切値 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| すず及びその化合物 | 複数 | 0.1% | 鉛フリーを含む、ほぼ全てのはんだの主成分 |
| 鉛及びその無機化合物 | 複数 | 0.1% | Sn63/Pb37等の鉛入りはんだ。鉛中毒予防規則も別立てで関わる |
| 銀及びその水溶性化合物 | 複数 | 0.1% | SAC系(Sn-Ag-Cu)の銀分 |
| 銅及びその化合物 | 複数 | 0.1% | SAC系・Sn-Cu系 |
| ビスマス | 7440-69-9 | 1% | 低温はんだ(Sn-Bi系)。裾切値は1% |
| アンチモン及びその化合物(三酸化二アンチモンを除く。) | 複数 | 0.1% | Sn-Sb系・一部の鉛フリーはんだ |
| インジウム | 7440-74-6 | 1% | 一部の低温・特殊はんだ。裾切値は1% |
| ロジン | 8050-09-7 | 0.1% | やに入りはんだの「やに」・ロジン系フラックス |
| イソプロピルアルコール(IPA) | 67-63-0 | 0.1% | 液状フラックスの溶剤。収載名は「プロピルアルコール」 |
| エタノール | 64-17-5 | 0.1% | 液状フラックスの溶剤 |
| 塩化亜鉛 | 7646-85-7 | 1% | 板金・配管用ペーストフラックスの活性剤。裾切値は1% |
| 塩化アンモニウム | 12125-02-9 | 1% | 板金用ペーストフラックスの活性剤(塩化亜鉛と併用)。裾切値は1% |
イソプロピルアルコール(IPA、CAS 67-63-0)は、一覧に「イソプロピルアルコール」の名前では載っていません。収載名「プロピルアルコール」(CAS RN欄は 71-23-8, 67-63-0)の備考「アルキル基の異性体を含む」により現行から義務対象で、SDS交付等に係る裾切値は0.1%です。慣用名で検索して出ないことは、対象外の根拠になりません。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。
この表にない成分はリスクアセスメント対象物質一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます(無料は月3件まで)。
自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
はんだの組成には次の型があります(代表例です。配合は製品により異なり、手元のSDSの記載が正です)。
- 鉛入り:Sn63/Pb37、Sn60/Pb40 など。鉛はおよそ37〜40%
- 鉛フリー:SAC305(Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5)、Sn-Cu系(Sn99.3/Cu0.7)、Sn-Bi系(低温・ビスマス約58%)、Sn-Sb系、Sn-Ag-Cu-Bi-In系 など
- やに入り:線の中心にロジン系フラックスを内包(およそ2〜3%)
裾切値と並べれば見当がつきます。すず・銅・銀・鉛は0.1%で、SAC305の銀3.0%も銅0.5%も裾切値を上回る。ビスマス・インジウム(金属インジウムの行。インジウム化合物は0.1%)は1.0%ですが、低温はんだのビスマス約58%は超えます。主成分のすずだけで多くのはんだが該当側に入る構造です。
フラックスの見落とし2つ
1. 溶剤(液状フラックス)
液状フラックス・ポストフラックスは大部分が溶剤で、IPA(イソプロピルアルコール)とエタノールが代表例。どちらも裾切値0.1%。
名前の罠があります。IPAは一覧に「イソプロピルアルコール」では載っていません。収載名は「プロピルアルコール」(CAS RN欄は 71-23-8, 67-63-0)、一覧の備考欄の「アルキル基の異性体を含む」でイソ体が入ります。慣用名で引いて出ないことは対象外の根拠になりません(IPAと収載名の話)。
2. 活性剤(板金用ペーストフラックス)
板金・配管のはんだ付けで使うペーストフラックスには、塩化亜鉛(CAS 7646-85-7、裾切値1.0%)系があります(塩化アンモニウム、CAS 12125-02-9、裾切値1.0%と併用されることもあります)。活性剤は少量の添加物に見えて、この型では主成分格。
そしてやに(ロジン)。CAS 8050-09-7、裾切値0.1%で収載されています。やには線の2〜3%程度が代表値なので、これも桁で上回ります。液状フラックスなら通常どおりラベル表示も判定しますが、やに入りはんだ線(固体で粉状にならない製品)では規則第30条ただし書によりラベル表示から除かれ得ます。どちらの場合も、SDS交付・リスクアセスメントの判定には影響しません。
判定の手順
ステップ1:品番を洗い出して最新SDSを揃える
はんだ線・棒、ソルダーペースト、液状・ペーストフラックス、洗浄剤まで品番単位で台帳に載せます。銘柄が長期間変わらない資材なのでSDSが古いままになりがち。2024年以前のSDSは、その後の追加物質が反映されていない可能性があるので再入手を。
ステップ2:SDS3項で成分と含有率を読む
合金は「Sn-3.0Ag-0.5Cu」のような組成表記でまとめられることがあります。その場合も3項に成分ごとの行があるはずなので、成分名・CAS番号・含有量を1行ずつ拾ってください(3項の読み方)。範囲表記なら、保守的に上限側で見ます。
ステップ3:収載名・CAS番号で照合し裾切値と比べる
鍵は収載名です。「すず」は「すず及びその化合物」、「銀」は「銀及びその水溶性化合物」として載っています。手元の成分名は全物質の検索一覧から引けます。
診断ツールでの出方(金属は候補提示)
この照合をSDSのPDFから自動で行うのが無料診断です。出方は主に3通り。
- 金属(錫/すず/スズ・鉛・銅・銀)——収載名が「すず及びその化合物」のような群名称のため、🟡「『すず及びその化合物』(裾切値0.1%)に該当する可能性→要確認」と候補を提示します。含有率と裾切値が並んで出るので、その場で突き合わせを
- CAS付きで個別収載の成分(ロジン・IPA・エタノール・塩化亜鉛・ビスマス)——🔴または🟢で直接返ります。🟢は「現行リストに該当なし」の意味で、安全を意味しません
- 単独で収載されている金属(ビスマス・インジウム)や、CAS番号から群名称の行が特定できた成分(アンチモン)——🔴で直接返ることがあります
注意点が一つ。元素記号(Sn・Pb)や英名(Tin・Lead)だけの行は日本語の元素名に読み替えて照合しますが、合金の一括表記(Sn-3.0Ag-0.5Cu)だけで書かれている行は、🟢「規制マスタに完全一致なし」のまま通ることがあります。🟢は該当しないことの証明ではないので、その場合は成分ごとに分けて入力するか、日本語の収載名で一覧を確認してください。
金属側は機械が候補を出し、人が確定する分担です。診断結果は目安——最終確認は一覧と条文で。
この記事の例で、照合を試す
やに入りはんだの例を入れてあります。「照合する」を押すと、この場で対象物質一覧と裾切値に照合して🔴🟡🟢を返します。自社のSDSの「3. 組成及び成分情報」に貼り替えれば、そのまま自社製品の確認になります。送信・保存はありません。
1行に1成分(成分名・CAS番号・含有率のどれでも)。入力内容はサーバーに送信されず、このページの中だけで照合します。
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自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
診断の実測例(代表的な組成を入力した例)
実際の製品ではなく、上の代表組成をそのまま成分として入力した結果です(2026年9月5日実測。製品ごとのSDSでは成分も含有率も異なります)。
| 入力(成分・含有率) | 診断の出方 |
|---|---|
| 鉛フリー SAC305(錫96.5%・銀3.0%・銅0.5%) | 錫→🟡「すず及びその化合物」(裾切値0.1%)の候補/銀→🟡「銀及びその水溶性化合物」(0.1%/水溶性のものに限る)の候補(収載名は金属銀そのものも含みます)/銅→🟡「銅及びその化合物」(0.1%)の候補。総合は🟡要確認 |
| 鉛入り Sn63/Pb37(錫63%・鉛37%) | 錫→🟡候補/鉛→🟡「鉛及びその無機化合物」(0.1%・無機のものに限る)の候補 |
| 低温はんだ Sn-Bi(すず42%・ビスマス58%) | すず→🟡候補/ビスマス→🔴(裾切値1%)。総合は🔴 |
| 液状フラックス(イソプロピルアルコール60〜80%・ロジン10〜30%・エタノール5〜10%) | 3成分とも🔴。IPAは収載名「プロピルアルコール」で照合される。総合は🔴 |
| 板金用ペーストフラックス(塩化亜鉛20〜40%・塩化アンモニウム5〜10%) | 2成分とも🔴(いずれも裾切値1%。塩化アンモニウムも収載されています) |
| やに入りはんだの「やに」(ロジン2〜3%) | 🔴(裾切値0.1%) |
すず・鉛・銅・銀の行が🟡で止まるのは、収載が群名称で「化合物の範囲」を機械が確定できないためです。含有率と裾切値は並んで表示されるので、その場で該否の当たりを付けられます。
鉛入りは鉛中毒予防規則が別にある
鉛中毒予防規則 第1条第5号リは、鉛業務に「自然換気が不十分な場所におけるはんだ付けの業務」を挙げています。該当すれば、屋内作業場での局所排気装置・プッシュプル型換気装置または全体換気装置の設置(第16条)、1年以内ごとの鉛健康診断(第53条)などが関わります。臨時に行う作業などの適用除外(第3条)もあり、範囲は作業場所と作業形態で変わります。条文には鉛の含有率の要件が書かれていないので、「鉛フリーだから鉛則は無関係」と決め付けず、使うはんだの成分を確認したうえで判断してください。条文と、貴社の化学物質管理者・有資格の専門家にご確認ください。
該当したあとに
- リスクアセスメント——作業実態に即してばく露を評価し、記録を残す
- 小分け容器の表示——液状フラックスや洗浄剤を移し替えて保管しているなら名称と人体に及ぼす作用の明示が必要
- 台帳の更新——確認日と、参照した一覧の版(施行日)を残す
よくある質問
Q. 鉛フリーに替えました。もう対象外? A. なりません。すず・銅・銀が裾切値0.1%で収載。判定は成分と含有率で。
Q. はんだ線にGHSラベルが無いのは違反? A. そうとは限りません。金属は「粉状のものに限る」ため。ただしSDS交付側にこの限定はなく、ラベルの有無は該否の根拠になりません。
Q. やに入りの「やに」も見る? A. 見てください。ロジン(CAS 8050-09-7)は裾切値0.1%、やには線の2〜3%程度が代表例。
Q. フラックスの溶剤は? A. IPA・エタノールが代表例でどちらも0.1%。IPAの収載名は「プロピルアルコール」で、慣用名では引けません。
まとめ
- 「鉛フリー=対象外」は誤り。すず・銅・銀が裾切値0.1%で収載されており、鉛フリーはんだもSDS交付・リスクアセスメントの対象になり得る
- ラベルとSDSは条文が別。金属は「粉状のものに限る」ためはんだ線のラベル表示は対象外になり得るが、SDS交付とリスクアセスメントは別に判定
- 見落としは溶剤(IPA・エタノール)・活性剤(塩化亜鉛)・やに(ロジン)。鉛入りは鉛中毒予防規則が別立て
- 判定はSDS「3. 組成及び成分情報」の成分ごとに収載名・CAS番号で照合し、裾切値と比べる
参考(一次情報)
- e-Gov法令検索:労働安全衛生法施行令(第18条・第18条の2)
- e-Gov法令検索:労働安全衛生規則(第30条・第34条の2)
- e-Gov法令検索:鉛中毒予防規則(第1条)
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。制度の詳細・最新の運用は一次情報をご確認のうえ、最終判断は有資格の専門家にご確認ください。
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