シンナーのSDS義務はどう変わった?有機則だけでは足りない2026年対応
訂正(2026-09-04): 本記事は従来「IPAは現行では対象外で、2027年4月1日に義務対象へ追加される」と記載していましたが、厚生労働省の対象物質一覧の再確認により誤りと判明したため訂正しました。IPAは収載名「プロピルアルコール」(アルキル基の異性体を含む)として現行から義務対象です。
「シンナーは有機則(有機溶剤中毒予防規則)で昔からやっている。今さら何を確認するのか」——塗装・印刷の現場で長く化学物質を扱ってきた事業者ほど、こう感じるはずです。
その実績は重要です。ただし2026年4月施行の改正を含む現在の労働安全衛生法の枠組みでは、有機則の遵守と、新しいSDS・リスクアセスメント義務は別物です。この記事では、その関係の整理と、自社のシンナー類の該否を確認する手順を解説します。
シンナーのSDS(書類そのもの)をお探しの方へ:シンナーは製品ごとに成分が違う混合物なので、単一物質のようなモデルSDSはありません。購入先(販売店・商社・メーカー)に品番と版(改訂日)を指定して請求するのが最短です(請求文テンプレ付きの入手方法)。主要メーカーは自社サイトでSDSを公開しているので、品番で検索すると見つかることもあります。成分ごとの参考資料は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のモデルSDS(トルエンなど単一物質)にあります。以下は、届いたSDSを受け取った側の「義務の対象か」の整理です。
※お急ぎの方へ:SDS(PDF)が手元にあれば、成分の照合は無料診断で自動化できます(登録不要・その場で結果)。
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有機則と新規制は「別レイヤー」で同時にかかる
混乱しやすいので先に整理します。
- 有機則:政令で定める有機溶剤(第1種〜第3種)について、局所排気・作業環境測定・健康診断などを定める従来規則
- 新しい化学物質規制:ラベル・SDS・リスクアセスメント義務の対象物質を約2,900物質規模へ拡大し、事業者の自律的管理を求める枠組み
つまり、有機則対象のトルエンやキシレンは両方の義務がかかり、有機則の対象外だった溶剤成分が新規制では対象ということが起こります。「有機則を守っている=新規制もクリア」ではありません。
さらに2025年5月公布の改正法で、対象は将来的にGHS分類で危険有害性のある全物質へ広がることが決定済みです。
シンナーこそ「商品名で判定できない」典型例
シンナーは単一物質ではなく混合溶剤です。「ラッカーシンナー」「ウレタンシンナー」「洗浄用シンナー」と呼び名が同じでも、メーカー・グレードごとに配合は異なります。判定はSDSの「3. 組成及び成分情報」で行うしかありません。
シンナー類でよく見る義務対象成分のチェックリスト:
お手元のSDSの「3. 組成及び成分情報」と、この表を見比べてください。物質名またはCAS番号が一致し、含有量が裾切値以上なら、義務対象の可能性が高い成分です。
| 物質名 | CAS番号 | SDS裾切値 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| トルエン | 108-88-3 | 0.1% | 溶剤系全般。有機則第2種との二重管理 |
| キシレン | 複数 | 0.1% | エチルベンゼン併含に注意 |
| エチルベンゼン | 100-41-4 | 0.1% | キシレン系シンナーに高頻度で含有 |
| 酢酸エチル | 141-78-6 | 1% | ラッカー系の主成分 |
| 酢酸ブチル | 複数 | 1% | ラッカー系の主成分 |
| MEK | 78-93-3 | 1% | 洗浄兼用の速乾溶剤 |
| ミネラルスピリット | 64742-47-8 | 1% | 塗料用シンナー・洗浄油の基材 |
| イソプロピルアルコール(IPA) | 67-63-0 | 0.1% | 収載名は「プロピルアルコール」。慣用名では一覧に出ない |
イソプロピルアルコール(IPA、CAS 67-63-0)は、一覧に「イソプロピルアルコール」の名前では載っていません。収載名「プロピルアルコール」(CAS RN欄は 71-23-8, 67-63-0)の備考「アルキル基の異性体を含む」により現行から義務対象で、SDS交付等に係る裾切値は0.1%です。慣用名で検索して出ないことは、対象外の根拠になりません。洗浄用シンナーに配合されていれば、台帳と該否確認の対象です。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」(2025年4月1日現在)。裾切値は「SDS交付等に係る裾切値」。※成分例は一般的な傾向であり、該否は個々のSDSの成分・含有量で確認する必要があります。
この表にない成分はリスクアセスメント対象物質一覧(検索可)で調べられます。SDS(PDF)をアップすれば、全リストとの照合を自動で行うこともできます。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます(無料は月3件まで)。
自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
注意したいのは、近年増えている「トルエンフリー」「キシレンフリー」を謳う代替シンナーです。置き換えられた溶剤成分が義務対象リストに追加されていることがあり、「フリー=規制対象外」とは限りません。
自社のシンナーを判定する3ステップ
ステップ1:用途別にシンナーを棚卸しし、最新SDSを入手する
希釈用・洗浄用・拭き取り用——用途ごとに違う製品を使っているのが普通です。一斗缶のラベルだけで済ませず、品番ごとに最新版SDSを購入先へ請求します。発行日が2024年より前のSDSは、追加物質が反映されていない可能性が高く要注意です。
ステップ2:成分をCAS番号で義務対象リストと照合する
混合溶剤は成分数が多く、慣用名表記も混ざります。厚生労働省の義務対象物質リストとの照合はCAS登録番号ベースで行ってください。
ステップ3:含有量と裾切値を比較する
物質ごとに定められた裾切値(義務がかかる濃度の下限)と、SDS記載の含有量を比較します。シンナーは主要成分が数十%単位で含まれるため、対象成分があればほぼ該当しますが、微量成分の扱いで判定が分かれることがあります。
なお、この照合(成分名×CAS番号×裾切値、約2,300物質)を自動でやるのがSDScanの無料診断です。SDSのPDFをアップするだけで、対象の可能性を🔴🟡🟢で一覧できます。
この記事の例で、照合を試す
ラッカーシンナーの例を入れてあります。「照合する」を押すと、この場で対象物質一覧と裾切値に照合して🔴🟡🟢を返します。自社のSDSの「3. 組成及び成分情報」に貼り替えれば、そのまま自社製品の確認になります。送信・保存はありません。
1行に1成分(成分名・CAS番号・含有率のどれでも)。入力内容はサーバーに送信されず、このページの中だけで照合します。
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自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
塗装・印刷現場の実務ポイント
- 濃度基準値への対応:濃度基準値は、有機則など特別規則の対象外の物質から順次設定されています。トルエン・キシレン等の有機則対象溶剤は当面設定の対象外(従来どおり有機則で管理)ですが、混合シンナー中の有機則対象外の成分に基準値が設定されていることがあり、成分単位の確認が必要です
- リスクアセスメントの単位:希釈作業・洗浄作業・乾燥待機など、作業ごとに評価します。有機則の作業環境測定結果は見積もりの材料として活用できます
- 化学物質管理者の選任:対象物を扱う事業場で必須。有機溶剤作業主任者とは別の役割です
- 関連材料の同時確認:シンナーを使う現場には必ず塗料があり、多くは洗浄剤・接着剤もあります。棚卸しは一括で行うのが効率的です
よくある質問
Q. 有機溶剤作業主任者がいれば、化学物質管理者は不要ですか? A. 別制度のため、それぞれ必要です。同一人物が両方を担うことは可能ですが、化学物質管理者には所定の要件(リスクアセスメント対象物の製造事業場では専門講習修了など)があります。
Q. 第3種有機溶剤や有機則対象外のシンナーなら、新規制も関係ないですか? A. いいえ。有機則の区分と義務対象物質リストは別物です。有機則対象外の成分が義務対象リストに載っているケースは珍しくありません。
Q. 局所排気装置を設置済みです。リスクアセスメントは省略できますか? A. 省略できません。既存の換気設備は「リスク低減措置が講じられている」という評価材料にはなりますが、アセスメントの実施義務自体は残ります。
まとめ:二重管理の照合負担を自動化する
シンナーの管理は「有機則の区分」「義務対象リスト」「裾切値」「濃度基準値」と参照先が多く、混合溶剤ゆえに成分数も多い——照合負担が最も重い材料のひとつです。
SDScanは、SDSのPDFをアップロードするだけで成分を抽出し、義務対象物質リストとの照合を自動で行います。無料プランで、まず一番使っているシンナーのSDSから試してみてください。
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「ラベル・SDS義務対象物質一覧・検索」
- 労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)化学物質情報管理研究センター
- NITE-CHRIP(化学物質総合情報提供システム)
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。最新の法令は一次情報でご確認のうえ、最終判断は貴社の化学物質管理者または有資格の専門家にご確認ください。
整理したいSDSは何件ありますか?
1件はSDSのPDF 1ファイルです。PDF内のページ数とは別に数えます。
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台帳を作ってもらう →PDFが手元にないときは、SDSの3項の成分名・CAS番号を貼るだけの照合(送信なし)でも同じ判定が出ます。