PFASが2028年4月1日にSDS義務対象へ——追加10物質の収載名・CAS・裾切値(公布済み)
PFASは、水や環境の話題で耳にすることが多い言葉です。それが2028年(令和10年)4月1日から、工場の書類棚の話になります。労働安全衛生法のラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象に、PFAS(ペルフルオロアルキル酸とその塩・前駆体)10物質が追加されるためです。
根拠は労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第90号・令和8年3月31日公布)ほか。2028年4月1日施行分は36物質で、うち10物質がPFASです。すでに公布済みで、収載名も裾切値も確定しています。施行日までは、この10物質を理由とする安衛法上の義務は生じません。今は準備の期間です。
PFASを含む製品のSDS(書類そのもの)をお探しの方へ:撥水剤・加工助剤・泡消火薬剤などのSDSは、購入先(販売店・商社・メーカー)に品番で請求するのが最短です(請求文テンプレ付きの入手方法)。単一物質としての参考資料は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のペルフルオロオクタン酸(PFOA)のモデルSDSが公開されています(製品ごとのSDSの代わりにはなりません)。以下は、そのSDSを受け取った側の「いつから義務か」の整理です。
2028年4月1日に追加される10物質
| 収載名 | CAS RN | SDS交付等に係る裾切値 | 通称 |
|---|---|---|---|
| ウンデカフルオロヘキサン酸 | 307-24-4 | 0.1% | PFHxA |
| トリデカフルオロヘプタン酸 | 375-85-9 | 0.1% | PFHpA |
| アンモニウム=トリデカフルオロヘプタノアート | 6130-43-4 | 0.1% | PFHpAのアンモニウム塩 |
| カリウム=トリデカフルオロヘプタノアート | 21049-36-5 | 0.1% | PFHpAのカリウム塩 |
| ナトリウム=トリデカフルオロヘプタノアート | 20109-59-5 | 0.1% | PFHpAのナトリウム塩 |
| ノナデカフルオロデカン酸 | 335-76-2 | 0.1% | PFDA |
| ノナフルオロブタン-1-スルホン酸 | 375-73-5 | 0.1% | PFBS |
| ペルフルオロ(ヘキサン-1-スルホン酸)(別名PFHxS) | 355-46-4 | 1% | PFHxS |
| アンモニウム=トリデカオロヘキサン-1-スルホナート | 68259-08-5 | 1% | PFHxSのアンモニウム塩 |
| 3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデカン-1-オール(別名8:2フルオロテロマーアルコール) | 678-39-7 | 1% | 8:2 FTOH |
7物質が裾切値0.1%、3物質が1%。塩の形(アンモニウム・カリウム・ナトリウム)も別行で収載されているので、酸の形だけを探しても塩の行は引けません。
そして略称では検索に出ません。収載名は法令上の表記で、「PFHxA」「PFBS」では名称欄に当たりません。確実なのはCAS番号です。
表記そのものにも罠があります。CAS 68259-08-5 の収載名は「アンモニウム=トリデカオロヘキサン-1-スルホナート」(一覧の表記のまま)。「トリデカフルオロ」で名称検索すると、この行だけ漏れます。
フッ素を含むが、ペルフルオロアルキル酸ではない物質
同じ改正の波には、フッ素を含む別系統の物質も入っています。
| 施行日 | 収載名 | CAS RN | SDS交付等に係る裾切値 | よく呼ばれる名前 |
|---|---|---|---|---|
| 2028年4月1日 | 4,4’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ジフェノール | 1478-61-1 | 0.1% | ビスフェノールAF |
| 2027年4月1日 | 2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン | 754-12-1 | 0.1% | 冷媒HFO-1234yf |
OECDが2021年に示した定義(少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチル基またはメチレン基を含む物質)では、これらも広義のPFASに含まれます。ただし法令上は個別の物質として収載されるため、判定軸は「PFASかどうか」ではなく「収載名・CAS番号が一覧にあるか、裾切値以上か」です。
すでに義務対象になっているPFAS
「2028年から」と読み流さないでください。代表的なPFASはすでに対象で、PFOS・PFOA・PFNAは2025年3月以前から収載されています。
| 収載名 | CAS RN | SDS交付等に係る裾切値 | 一覧の備考 |
|---|---|---|---|
| ペルフルオロオクタン酸及びそのアンモニウム塩(PFOA) | 335-67-1/3825-26-1 | 0.1% | 令和7年3月31日以前から対象(*3) |
| ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)(別名PFOS) | 1763-23-1 | 0.1% | 令和7年3月31日以前から対象(*3) |
| ペルフルオロオクタン-1-スルホン酸カリウム | 2795-39-3 | 0.1% | 2025年4月1日から追加(*4) |
| ペルフルオロノナン酸(PFNA) | 375-95-1 | 0.1% | 令和7年3月31日以前から対象(*3) |
| ペルフルオロ(1,2-ジメチルシクロヘキサン) | 306-98-9 | 1% | 2026年4月1日から追加 |
備考の「*3」「*4」は厚生労働省の一覧の脚注で、*3は令和7年3月31日以前から対象だった物質、*4は令和7年4月1日に追加された物質を指します。
フッ素樹脂のモノマーであるテトラフルオロエチレン(CAS 116-14-3・裾切値0.1%)も、令和7年3月31日以前から収載されています(*3)。
一方、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE・CAS 9002-84-0)は、現行の一覧にも2027年・2028年の追加一覧にも収載されていません。ただしフッ素樹脂の加工では、助剤・離型剤・洗浄剤といった別の化学品を併用します。それらのSDSは別に確認が必要です。
何が義務になるのか
義務対象物質を裾切値以上含む製剤には、次の3つがかかります。
- ラベル表示(労働安全衛生法第57条)
- SDS交付(第57条の2)
- リスクアセスメント(第57条の3)
判定の単位は成分で、混合物はSDS交付等に係る裾切値以上を含有する製剤が対象。10物質のうち7物質は0.1%。撥水剤や表面処理剤の添加量を考えると、「微量だから外れる」と言い切れる水準ではありません。
裾切値は、ラベル表示とSDS交付で列が違うことがあります。一覧を引くときは目的の列(本記事で扱うのはSDS交付等に係る裾切値)を見てください。SDSのどこを読むかは3項の読み方にまとめています。
化審法とは別の制度
PFOS・PFOA・PFHxS(それぞれの塩・異性体等を含む)は、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)の第一種特定化学物質に指定されています(同法施行令 別表第一・第十七号=PFOS、第三十四号=PFOA、第三十六号=PFHxS)。
化審法は製造・輸入等に関する規制、安衛法のSDS交付は職場での情報伝達の制度で、両方を見る必要があります。本記事が扱うのは安衛法側だけです。
自社のどこにあるか
PFASは、次のような用途で使われることがあります。
- 撥水・撥油加工剤
- フッ素樹脂加工の助剤
- 泡消火薬剤(旧来品)
- めっき浴のミスト抑制剤(旧来品)
- 離型剤・潤滑剤
- 半導体・電子部品のプロセス材料
使用の有無は用途名では決まりません。製品ごとのSDSの3項で確認を。
「フッ素系」の総称で書かれている落とし穴
SDSの3項に「フッ素系界面活性剤」「フッ素系撥水剤」とだけ書かれ、CAS番号が無いことがあります。この行は、そのままでは照合できません。
照合できないことは、該当しないことの確認になりません。供給者に成分名とCAS番号を問い合わせてください。「2028年4月1日に追加される10物質(令和8年政令第90号)を裾切値以上含みますか」と根拠を添えて聞くと、話が早く進みます。
今やること——3ステップ
ステップ1:SDS3項をCAS番号で照合する
品番ごとに最新版のSDSを揃え、「3. 組成及び成分情報」から成分名・CAS番号・含有量を拾います。手元の成分は物質一覧から引けます(公布済みの追加分は「2027年4月追加」「2028年4月追加」で絞り込み)。
PDFを外部に上げたくない場合は成分の貼り付け照合を。3項を貼るだけ、登録不要・送信なしで照合でき、公布済み・未施行の追加リストに収載された成分は🟡で予告されます。
ステップ2:台帳に版と日付を残す
該当ありも該当なしも、確認日と参照した一覧の施行日を添えて記録します。これが無いと、リストが変わるたびにゼロから確認し直すことになります(台帳テンプレート)。
ステップ3:2028年4月の施行前に再照合する
追加10物質は確定しているので、再照合の担当と時期を先に決めます。ステップ2の台帳があれば、施行時の作業は差分確認だけ。該当した製品はリスクアセスメントの記録まで進みます。
2027年・2028年の追加の全体像は別記事、同じ2028年追加のポルトランドセメントは個別にまとめています。
この記事の例で、照合を試す
フッ素系撥水剤・加工助剤の例を入れてあります。「照合する」を押すと、この場で対象物質一覧と裾切値に照合して🔴🟡🟢を返します。自社のSDSの「3. 組成及び成分情報」に貼り替えれば、そのまま自社製品の確認になります。送信・保存はありません。
1行に1成分(成分名・CAS番号・含有率のどれでも)。入力内容はサーバーに送信されず、このページの中だけで照合します。
一覧が改正されたら、再チェックの案内をメールで受け取る(無料)
公布済みの2027年4月1日・2028年4月1日の追加は、それぞれ施行の前に「いま照合し直す時期です」と追加分の一覧をお送りします。改正の公布など重要な動きがあったときにもお知らせします。登録はメールアドレスだけで、費用はかかりません。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます(無料は月3件まで)。
自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
よくある質問
Q. PTFE(フッ素樹脂)は義務対象ですか? A. ポリテトラフルオロエチレン(9002-84-0)は現行・追加のいずれの一覧にも収載されていません。モノマーのテトラフルオロエチレン(116-14-3)は0.1%で収載。加工助剤・離型剤は別製品なので個別に確認を。
Q. SDSに「フッ素系界面活性剤」とだけ書かれています。 A. その行だけでは判定できません。供給者に成分名とCAS番号を照会してください。開示されない場合でも、裾切値以上含むかの確認は依頼できます。
Q. 裾切値未満なら書かなくてよい? A. その成分を理由とする交付義務は生じません。ただし別の成分で対象になることがあり、裾切値はラベル表示とSDS交付で列が違うことがあります。
Q. 化審法で規制されている物質が、なぜSDS一覧にも? A. 別の制度だからです。化審法は製造・輸入等の規制、安衛法のSDS交付は職場での情報伝達。両方を見ます。
まとめ
- 2028年4月1日、PFAS10物質がSDS交付等の義務対象に追加(令和8年政令第90号・令和8年3月31日公布/同日施行分は36物質)。施行日までは義務は生じない
- 裾切値は7物質が0.1%、3物質が1%。塩(アンモニウム・カリウム・ナトリウム)も別行で収載
- 略称では引けない。照合はCAS番号で(CAS 68259-08-5 は収載名が「トリデカオロ」表記)
- PFOS・PFOA・PFNAは令和7年3月31日以前から、PFOSのカリウム塩は2025年4月1日から、ペルフルオロ(1,2-ジメチルシクロヘキサン)は2026年4月1日から、すでに義務対象
- PTFE(9002-84-0)はいずれの一覧にも収載されていない。モノマーのテトラフルオロエチレンは対象で、加工助剤や副資材は別に確認
- 「フッ素系界面活性剤」等の総称しか無ければ供給者に成分名とCAS番号を照会。化審法の第一種特定化学物質(PFOS・PFOA・PFHxS)とは別の制度で、両方を見る
参考(一次情報)
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」令和10年4月1日施行分(追加10物質の収載名・CAS RN・SDS交付等に係る裾切値)/現行版(PFOS・PFOA・PFNA等)
- 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第90号・令和8年3月31日公布)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:表示・通知対象物質の一覧・検索
- e-Gov法令検索:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令(別表第一・第十七号/第三十四号/第三十六号)
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。施行日・収載名・裾切値は一次資料でご確認いただき、自社製品の該否の最終判断は、貴社の化学物質管理者または有資格の専門家にご確認ください。
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台帳を作ってもらう →PDFが手元にないときは、SDSの3項の成分名・CAS番号を貼るだけの照合(送信なし)でも同じ判定が出ます。