酸化チタン(二酸化チタン)はSDS交付・ラベル表示の義務対象?——白い塗料・樹脂・インキのほぼ全部が該当する理由
「白い顔料。食品や化粧品にも使われている、いちばん無害そうな成分」——酸化チタン(二酸化チタン・CAS 13463-67-7)は、化学物質規制の確認で最も見落とされやすい成分の一つです。ところが労働安全衛生法の義務対象物質一覧には収載されていて、白や淡色の塗料・樹脂・インキ・紙の多くが、この成分を理由に義務対象になります。
本記事は労働安全衛生法のラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務を中心に、酸化チタンの扱いを整理します。
酸化チタンのSDS(書類そのもの)をお探しの方へ:製品のSDSは、購入先(販売店・商社・メーカー)に品番で請求するのが最短です(請求文テンプレ付きの入手方法)。単一物質としての参考資料は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の酸化チタンのモデルSDS(同じCAS番号で、ナノ粒子として作成されたもの)が公開されています。製品ごとのSDSの代わりにはなりません。
結論:現行の義務対象。SDS交付等の裾切値は0.1%
厚生労働省の義務対象物質一覧(令和8年4月1日時点施行分)に、次の行があります。
| 一覧の項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 名称 | 酸化チタン(Ⅳ) |
| 英語名称 | Titanium(IV) oxide |
| CAS RN *1 | 13463-67-7 |
| ラベル表示に係る裾切値 | 1% |
| SDS交付等に係る裾切値 | 0.1% |
| 備考 | *3(令和7年3月31日以前から義務対象) |
新しく追加された物質ではなく、以前から対象です。SDSでは「酸化チタン」「二酸化チタン」「チタン白」「Titanium dioxide」「TiO2」などと書かれますが、一覧の収載名は「酸化チタン(Ⅳ)」です。CAS番号 13463-67-7 で照合すれば、表記の違いに関係なく当たります。
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自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
なぜ「安全な白」が対象なのか
根拠は、口に入れたときや皮膚についたときの毒性ではなく、粉じんとして吸い込んだときの影響です。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のモデルSDSでは、酸化チタンのGHS分類は次のとおりです。
| 項目 | 区分 |
|---|---|
| 発がん性 | 区分2(発がんのおそれの疑い) |
| 特定標的臓器毒性(反復ばく露) | 区分1(呼吸器):長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害 |
つまり「食品添加物や化粧品に使えること」と「工場で粉じんとして吸い込む可能性」は別の評価で、義務対象物質の一覧は後者で決まっています。
どこに入っているか
酸化チタンは白色顔料の主役で、隠ぺい力の高さから多くの製品に入っています。含有率の目安は製品によって大きく違うので、確定はSDSの3項で行ってください。
| 製品 | 入り方の目安 | 労働安全衛生法での扱い |
|---|---|---|
| 塗料(白・淡色・下塗り) | 顔料として10〜25%程度 | 対象(0.1%以上) |
| 樹脂(マスターバッチ・白色成形品・PVC) | 数%〜十数% | 対象。ペレットや成形品は「取扱いの過程で粉状にならない固体」なら適用除外の整理があるが、粉体・切削粉が出る工程は要確認 |
| 印刷インキ・トナー | 白インキで高含有 | 対象 |
| 紙の塗工・ゴム・接着剤 | 数% | 対象(0.1%以上) |
| 化粧品・日焼け止め・食品添加物 | — | 医薬品医療機器等法・食品衛生法の製品として適用除外の整理(業務で顔料を扱う場合は別) |
「白い塗料を使っているだけ」の塗装工場でも、3項に酸化チタンがあれば、その塗料は対象製品です。有機溶剤系ならキシレン・酢酸ブチルなど別の対象成分も同時に入ることが多く(塗料の該否確認)、酸化チタン単独の問題ではありません。
酸化チタンにかかっている規制(現在)
| 規制 | 酸化チタンの扱い |
|---|---|
| 安衛法 ラベル表示・SDS交付 | 対象(ラベル1%・SDS 0.1%) |
| 安衛法 リスクアセスメント | 対象(対象物質を扱う事業場は規模を問わず実施義務) |
| 有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則 | 該当なし |
| 濃度基準値 | 設定なし(令和7年10月8日現在の一覧) |
| 皮膚等障害化学物質 | 指定なし(令和7年1月24日時点の一覧) |
| がん原性物質(作業記録等の30年保存) | 指定なし(本記事作成時点の一覧) |
| 消防法 | 該当なし(不燃性) |
個別規則の該当がないため、措置はリスクアセスメントで決めます。濃度基準値が設定されていないので、屋内作業場では「ばく露を最小限にする」(安衛則第577条の2第1項)が求められます。
粉体と液体で、見るところが違う
判定は製品単位ですが、ばく露は作業の形で決まります。
- 顔料の粉体を扱う工程(秤量・投入・袋詰め)——吸入が主なリスク。局所排気、防じんマスク、粉じんを立てない投入方法。SDSの8項に保護具の指定があります
- 液体塗料・インキとしての使用——分散した酸化チタンは飛散しにくい。スプレー塗装のミストと、溶剤成分の蒸気のほうが先に問題になります
- 乾いた塗膜・樹脂の研磨・切削——粉じんとして再び出てきます。集じんと保護具はここでも必要です
- 記録——実施日・作業・結果・措置を記録し、労働者に周知します(記録の作り方)
診断ツールではどう出るか
SDScanの無料診断・貼り付け照合は、成分名・CAS番号・含有率を現行の義務対象リストと照合します。溶剤系の白塗料の例では次のように出ます。
| SDSの成分名 | CAS | 判定 | 判定根拠の表示 |
|---|---|---|---|
| 酸化チタン | 13463-67-7 | 🔴 | 「裾切値0.1%以上→対象」 |
| キシレン | 1330-20-7 | 🔴 | 「裾切値0.1%以上→対象」・有機則第2種・皮膚吸収性有害物質 |
| トリレンジイソシアネート | 584-84-9 | 🔴 | 「裾切値0.1%以上→対象」・特化則(イソシアネートの規制) |
酸化チタンの根拠は裾切値だけですが、同じ缶の中に有機則・特化則の成分が同居するのが塗料の特徴です。下の例で、そのまま照合できます。
この記事の例で、照合を試す
溶剤系塗料と硬化剤の例を入れてあります。「照合する」を押すと、この場で対象物質一覧と裾切値に照合して🔴🟡🟢を返します。自社のSDSの「3. 組成及び成分情報」に貼り替えれば、そのまま自社製品の確認になります。送信・保存はありません。
1行に1成分(成分名・CAS番号・含有率のどれでも)。入力内容はサーバーに送信されず、このページの中だけで照合します。
よくある質問
Q. 白い塗料は全部、義務対象になるのですか? A. 3項に酸化チタンが0.1%以上あれば対象です。白・淡色の塗料には10〜25%入ることが多く、多くが該当します。確定は製品ごとのSDSで。
Q. 化粧品や日焼け止めを業務で使っています。対象ですか? A. 化粧品・医薬部外品として販売されている製品は、ラベル表示・SDS交付義務の適用除外として整理され、リスクアセスメントの実施義務からも除かれています。工業用の顔料や塗料は義務対象です。
Q. 塗料に溶けている状態でも、吸入のリスクを見ないといけませんか? A. 実施義務はかかります。措置は作業の形で決め、粉体の秤量・スプレーのミスト・塗膜の研磨粉じんが吸入の見どころです。
Q. がん原性物質として記録を30年保存する対象ですか? A. 本記事の作成時点の一覧に酸化チタンは載っていません。ただしGHS分類で発がん性区分2がついているので、吸入のばく露を抑える措置はリスクアセスメント上求められます。
まとめ
- 酸化チタン(13463-67-7)は現行のラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象。SDS交付等の裾切値は0.1%
- 根拠は粉じんとして吸い込んだときの影響(発がん性区分2・反復ばく露の呼吸器障害区分1)。食品や化粧品での安全性とは別の評価
- 白・淡色の塗料・樹脂・インキ・紙の多くが該当。表記は「二酸化チタン」「チタン白」などばらつくので、CAS番号で照合する
- 有機則・特化則・濃度基準値・皮膚等障害・がん原性物質の指定はない。措置はリスクアセスメントで、粉体・ミスト・研磨粉じんを見る
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」令和8年4月1日時点施行分(酸化チタン(Ⅳ):ラベル表示に係る裾切値1%・SDS交付等に係る裾切値0.1%・備考*3)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:酸化チタンのモデルSDS(CAS 13463-67-7)(GHS分類:発がん性区分2・特定標的臓器毒性(反復ばく露)区分1(呼吸器))
- 厚生労働省「労働安全衛生規則第577条の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び濃度の値」令和7年10月8日現在の一覧
- 厚生労働省「皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質リスト」令和7年1月24日時点
- 厚生労働省「がん原性物質」一覧(作業記録等の30年保存)
- 厚生労働省「化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)」Q4-1(一般消費者の生活の用に供する製品の扱い)
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。収載名・裾切値・適用除外の範囲は一次資料でご確認いただき、自社製品の該否の最終判断は、貴社の化学物質管理者または有資格の専門家にご確認ください。