プロピレングリコール(PG)はSDS交付・ラベル表示の義務対象?——2025年4月から収載・裾切値1%・不凍液のエチレングリコールとの違い
不凍液・熱媒体、塗料やインキの凍結防止と湿潤、洗浄剤や除菌剤の基材、そして食品添加物や化粧品——プロピレングリコール(PG・CAS 57-55-6)は「低毒性の代表」として、有害なエチレングリコールの代わりに選ばれてきた成分です。
その成分が、2025年4月1日から労働安全衛生法のラベル表示・SDS交付・リスクアセスメントの義務対象になっています。「PGだから規制は関係ない」という整理は、2025年3月までのものです。本記事は労働安全衛生法の義務を中心に、製品別の扱いとエチレングリコールとの違いを整理します。
プロピレングリコールのSDS(書類そのもの)をお探しの方へ:製品のSDSは、購入先(販売店・商社・メーカー)に品番で請求するのが最短です(請求文テンプレ付きの入手方法)。単一物質としての参考資料は、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のプロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)のモデルSDSが公開されています(製品ごとのSDSの代わりにはなりません)。
結論:2025年4月1日から義務対象。裾切値はラベル・SDSとも1%
厚生労働省の義務対象物質一覧(令和8年4月1日時点施行分)に、次の行があります。
| 一覧の項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 名称 | プロピレングリコール |
| 英語名称 | Propylene glycol |
| CAS RN *1 | 57-55-6 |
| ラベル表示に係る裾切値 | 1% |
| SDS交付等に係る裾切値 | 1% |
| 備考 | *4(令和7年4月1日から義務対象に追加) |
裾切値が1%なので、微量の添加では対象になりませんが、不凍液・熱媒体(数十%)や、塗料・洗浄剤の基材(数%)はほぼ該当します。含有量が範囲表記(例:「1〜5%」)のときは、上限側で裾切値と比べるのが安全側の読み方です。
PDFをドラッグ&ドロップするだけ。登録不要で試せます(無料は月3件まで)。
自社で判断しづらいSDSは、先行期間(10月31日まで)は3製品まで無料でこちらで確認します。info@sdscan.jpにPDFを添付してお送りください(PDF化がむずかしい場合は製品名を一言でも構いません)。この確認は判定と同じ情報提供であり、法令適合の保証や法的助言ではありません。
なぜ「低毒性のPG」が対象なのか
根拠は、職場での取り扱いを前提にした国のGHS分類です。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のモデルSDS(収載名とは別に「プロパン-1,2-ジオール」の名で作成)では、次の分類がついています。
| 項目 | 区分 |
|---|---|
| 特定標的臓器毒性(単回ばく露) | 区分1(中枢神経系、血液系)・区分3(麻酔作用) |
| 特定標的臓器毒性(反復ばく露) | 区分1(中枢神経系、呼吸器) |
食品添加物や化粧品としての安全性評価は、通常の使用量での経口・皮膚を前提にしたものです。一覧は「工場で高濃度の液体や加熱時の蒸気・ミストを扱う」場面を前提に決まっており、評価の軸が違います。
製品別:どこに入っているか
| 製品 | 入り方の目安 | 労働安全衛生法での扱い |
|---|---|---|
| 不凍液・LLC(PG系)・ブライン・熱媒体 | 30〜60% | 対象。食品機械や飲料設備でEG系の代わりに選ばれることが多い |
| 塗料・インキ・接着剤(凍結防止・湿潤・溶剤) | 数% | 対象(1%以上なら) |
| 洗浄剤・除菌剤・消臭剤の基材 | 数〜数十% | 対象。業務用として販売される製品 |
| 舞台・演出用のフォグ液(スモーク) | 主成分 | 対象。業務用途で、加熱してミストにする |
| 化粧品・医薬品・医薬部外品 | — | 医薬品医療機器等法の製品として適用除外の整理 |
| 食品添加物・電子タバコのリキッド(消費者向け) | — | 食品・一般消費者の生活の用に供する製品として適用除外の整理 |
同じ容器の成分でも、工業用・業務用として販売されているか、化粧品・食品として販売されているかで扱いが分かれます(厚労省Q&A Q4-1)。迷ったら、容器の表示と購入先のSDSの有無で確認してください。
エチレングリコールとの違い
不凍液の「EG系かPG系か」は、どちらも対象という点では同じですが、付随する規制が違います。
| 項目 | エチレングリコール(EG) | プロピレングリコール(PG) |
|---|---|---|
| CAS番号 | 107-21-1 | 57-55-6 |
| 一覧への収載 | 令和7年3月31日以前から | 2025年4月1日から |
| 裾切値(ラベル/SDS) | 1%/1% | 1%/1% |
| 皮膚等障害化学物質 | 皮膚吸収性有害物質(裾切値1%)→不浸透性の保護手袋等の使用義務 | 指定なし |
| 濃度基準値 | 8時間 10 ppm・短時間 50 ppm(2024年4月適用)→屋内作業場でばく露を基準値以下にする義務 | 設定なし |
| 有機則・特化則 | 該当なし | 該当なし |
| 国のGHS分類(主なもの) | 急性毒性(吸入)区分4・皮膚刺激性区分2・眼刺激性区分2B・特定標的臓器(単回)区分1(中枢神経系、血液系、腎臓) | 特定標的臓器(単回)区分1(中枢神経系、血液系)・(反復)区分1(中枢神経系、呼吸器) |
EG系からPG系に替えると、保護手袋の義務と濃度基準値の管理は外れますが、SDS交付・ラベル表示・リスクアセスメントの対象であることは変わりません。「PGに替えたから台帳から外す」は誤りです。
現場で見るところ
- 加熱する工程(熱媒体・フォグ・乾燥炉)——蒸気やミストを吸い込むのがPGの主なばく露です。換気と、SDSの8項(ばく露防止及び保護措置)に沿った保護具
- 常温の液体を扱う工程(充填・希釈・拭き取り)——皮膚等障害化学物質の指定はありませんが、8項の指定に従います
- 台帳と再照合——2025年4月の追加分なので、それ以前に「対象外」と整理した台帳は再照合が必要です。台帳のテンプレートに「確認したリストの版」を残しておくと、次の追加(2027年・2028年)でも差分だけ見れば済みます
- 記録——実施日・作業・結果・措置を記録し、労働者に周知します(記録の作り方)
診断ツールではどう出るか
SDScanの無料診断・貼り付け照合は、成分名・CAS番号・含有率を現行の義務対象リストと照合します。PG系の不凍液の例では次のように出ます。
| SDSの成分名 | CAS | 判定 | 判定根拠の表示 |
|---|---|---|---|
| プロピレングリコール | 57-55-6 | 🔴 | 「裾切値1%以上→対象」 |
| ベンゾトリアゾール(防食剤) | 95-14-7 | 🔴 | 収載名「1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール」・「裾切値1%以上→対象」・2026年4月1日追加分 |
| リン酸二カリウム | 7758-11-4 | 🟢 | 現行リストに一致する行なし |
| 水 | 7732-18-5 | 🟢 | 現行リストに一致する行なし |
CAS番号のない古いSDSで成分名が「1,2-プロパンジオール」「プロパン-1,2-ジオール」と書かれていても、収載名「プロピレングリコール」に読み替えて🟡(要確認)で返します。不凍液は主成分だけでなく、防食剤のベンゾトリアゾールのように2026年4月に追加された成分が同居していることがあるので、3項の全成分で見てください。
この記事の例で、照合を試す
プロピレングリコール系の不凍液(熱媒体)の例を入れてあります。「照合する」を押すと、この場で対象物質一覧と裾切値に照合して🔴🟡🟢を返します。自社のSDSの「3. 組成及び成分情報」に貼り替えれば、そのまま自社製品の確認になります。送信・保存はありません。
1行に1成分(成分名・CAS番号・含有率のどれでも)。入力内容はサーバーに送信されず、このページの中だけで照合します。
よくある質問
Q. 食品添加物や化粧品に使われる成分なのに、なぜ義務対象なのですか? A. 一覧は職場での取り扱いを前提にした国のGHS分類で決まります。モデルSDSでは特定標的臓器毒性(単回・反復)の区分がついており、食品や化粧品としての安全性評価とは軸が違います。
Q. 不凍液はEG系とPG系のどちらも対象ですか? A. どちらも対象です。EGには皮膚吸収性有害物質の指定と濃度基準値があり、PGにはありません。裾切値はどちらも1%です。
Q. SDSの成分名が「1,2-プロパンジオール」です。同じものですか? A. 同じ物質です。CAS番号 57-55-6 で照合すれば表記に関係なく当たります。SDScanの照合もこれらの表記を読み替えます。
Q. 手元のSDSに安衛法の記載がありません。 A. 2025年4月より前の発行なら、15項に記載がないことがあります。義務は成分と含有量で決まるので、3項で確認し、古ければ最新版を請求してください(SDSの入手方法)。
まとめ
- プロピレングリコール(57-55-6)は2025年4月1日から義務対象。裾切値はラベル・SDSとも1%
- 根拠は職場での取り扱いを前提にしたGHS分類(特定標的臓器毒性)。食品・化粧品での安全性とは別の評価
- 不凍液・熱媒体・塗料・洗浄剤の業務用製品は対象。化粧品・食品として売られる製品は適用除外の整理
- エチレングリコールは皮膚吸収性・濃度基準値つき、PGはなし。どちらも台帳に載せて再照合の対象にする
- SDSの「1,2-プロパンジオール」表記はCAS番号で照合する
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参考(一次情報)
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付等の義務対象物質一覧」令和8年4月1日時点施行分(プロピレングリコール:ラベル表示に係る裾切値1%・SDS交付等に係る裾切値1%・備考*4/エチレングリコール:同1%・1%・備考*3)
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」:プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)のモデルSDS/エチレングリコールのモデルSDS
- 厚生労働省「労働安全衛生規則第577条の2第2項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び濃度の値」令和7年10月8日現在の一覧(エチレングリコール:8時間10ppm・短時間50ppm)
- 厚生労働省「皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質リスト」令和7年1月24日時点(エチレングリコール:皮膚吸収性有害物質)
- 厚生労働省「化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)」Q4-1
※本記事は情報提供であり、法令適合を保証するものではありません。収載名・裾切値・適用除外の範囲は一次資料でご確認いただき、自社製品の該否の最終判断は、貴社の化学物質管理者または有資格の専門家にご確認ください。